防災教育の2つの方向
2012年6月に名古屋大学減災連携研究センター長の福和伸夫氏の講演を聞いた。
その時、福和氏の挑発的な言い方に驚いた。もう10年以上経ったから書いてもいいかな。
◆さんずいのつく地名の場所に住んではいけない。
◆「新」のつく地名の場所も、要注意。
◆名古屋で言えば熱田神宮の南に住んではいけない。
◆濃尾平野も西側はいけない
◆防災対策をしていない人が、言い訳ばかりしている。
生死を分ける問題である。
甘い考えの人には、厳しい注意もしなければならない。
そのような福和氏のプロ意識を肌で感じる1時間ではあった。
福和氏は、ライフステージを上げるごとに、住まいの高度を上げるようにとのアドバイスもされた。
これは、危険な地域と分かっているなら、いつまでも住む必要はない。年収がアップしたら住居を安全な地域に移せという、ある意味で冷たい「リスク回避」である。
福和氏のような防災教育の授業を受けた子は。
◆我が家が危険地域にあるなら、早く転居すべきだ。
という感想を持つだろう。
授業を終えた子どもの感想が「早くこの町を出たいです」でよいのかは疑問であった。
これは、津波の危険のある地域で繰り返し避難訓練を指導してきた片田教授の防災教育とは真逆である。
津波も心配なら、高地の土砂崩れも心配だ。
どの土地にも、それなりの災害リスクがある。
転居しても転居しても心配したらきりがない。
どの土地に住むにしろリスクを受け入れる覚悟がないと、よそへ移りたくなるだけだ。
今住んでいる土地で、リスクを受け入れて、自助・共助する意識を育てることが、学校で行うべき防災教育の基本であるとは思う。
防災教育を行うなら、「受け入れる」タイプの授業をすべきだと思う。
とはいえ、福和氏に反論できない。
リスクの高い地域と、リスクの低い地域を選べるなら、リスクの低い地域を選ぶ方が賢明だ。
「リスクの高い地域」に住むならば、それなりに覚悟が必要であることは間違いない。
自分の住む地域のリスクについて、自己責任でしっかり調べておくことが「自助」の第一歩とも言える。
※「日本各地のくらし」の授業をするときに、「その土地ごとの苦労」を前面に出して授業を展開すると「あんな土地には住みたくないな」というマイナスのイメージを植え付けることになりかねない。
どんな地域にも長所短所があり、どこの住民も長所短所を生かしてたくましく生きている、というプラス思考の授業に取り組まねばならない。
「どこどこの土地には住んではいけない」などという資格は誰にもない。それは差別にもつながっていく。
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