November 01, 2021

読書は脳の想像力を高める

『脳を創る読書』酒井邦嘉(実業之日本社)には、次のように書いてある。

◆想像力が身についていない人は、メールなど文字だけの情報の場合、読んでも相手の意図を察することができないので、日常的に多くの失敗を経験していることだろう。しかも、その原因が自分自身にあると自覚していないため、何度も同じ失敗を繰り返してしまう。p125


「脳はなぜ行間を読むことができるのか」の項には、次のようにある。

◆人間はいつも外界を受容しながらモデルを作り、それを外界の情報で確認しながら次の展開を予想して先読みを続けている。だから、出来事だけが書かれていて主人公の心情については書かれていない場面でも、「主人公はきっとこう思っているのに違いない」というモデルを脳の中に作り、「きっと話はこう展開していくだろう」・・などと予測しながら読んでいるわけだ。こうして文章に表現されていない部分のモデルが脳の中に作られているからこそ、行間を読むことができる。p98

・・・この主張の例示として登場するのが有名な「サリーとアン」のテストの話だ。

◆「アンがボールを箱の中に移し替えたのだが、このことをサリーは知らないはずだ」ということを想像力で補わない限り、実際にボールの入っている箱のほうを答えてしまうだろう。我々は頭の中に、それぞれの登場人物(この場合はサリーとアン)に対して別々のモデルを作り、想像力で行間を埋めながら先の展開を推理しているのだ。
 しかし、一部の子どもたちは、登場人物のモデルをうまく作ることができずに、このテストデ間違える傾向にあるという。p100

・・・「想像力」の重要性が、あちこちに書いてある。

◆文章や漫画から登場人物の心を汲み取るためには、脳の想像力で使って人に対するモデルが作られなくてはならない。
日常生活で相手の心がわかるには、目や表情やわずかな仕草などを読み取り、言葉からの断片的な情報を結びつけて真意を読み取る必要がある。だから、相手の嘘や、その中に隠された真意も見通せるわけだ。人間の想像力は実に奥深い。p102

◆小さいときにあまり本を読まずに、想像力が欠如したまま大人になってしまうのは恐ろしいことだ。文字通りの意味がとれるならまだいいが、自分の思い込みだけで読むようになったら、その間違いを決して自分では修正できなくなってしまう。だいだい自分勝手なことをそのまま書いただけでは、相手が時間をかけて読んでくれるはずがない。相手の立場から自分の文章を読んだらどう受け取るだろうか、という想像力が身について初めて、自分の真意を相手に伝えることができ、相手の心を動かすような文章が書けるようになるのだろう。p122/123

・・・「想像力が言語コミュニケーションを円滑にする」という見出しの項には次のようにある。

◆映像は情報が多い分、想像力の余地を与えない。想像力で補うべき情報は欠落したままなので、知識の応用も利かない。
そのときはわかったつもりになるのだが、想像力で補うことが必要とされないものにばかり接していると、結局、想像力が身につかないことになる。紙の本では、どうしても足らない情報を想像力で補うことによって、その人に合った、自然で個性的な技が磨かれたのだ。p125

・・・クリエイテイブの「創造力」を調べる途中で、「想像力」にぶつかってしまった。
たしかに、正しい読解には、正しい想像が必要だ。
足りない情報は「想像力で補う」しかないのだ。

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October 29, 2021

黒柳徹子 「小さいときから考えてきたこと」(新潮文庫)

最近の自分の読書は教育書・ビジネス書が多いが、自分の知らない世界に触れるという意味では小説やエッセイも大事にしたい。

星新一のショートショートは今の中学生にも人気があるとのことだったが、まずはエッセイや短編で読書の基礎体力を付けさせたい。最近は重松清も恩田陸も読んでいないけど、「これではいかん」という気になった。児童生徒に読ませたい作品をしっかり把握できるように読書の方向を調整したい。特に朝読書という短時間でそこそこキリがつかないようでは、授業中に続きが読みたくなって困るので、エッセイは都合がいい。

 黒柳徹子の「小さいときから~」は、ユニセフ親善大使として訪れた紛争地域での子どもたちの様子と自身の戦争中の体験とが重なる部分があり、中学生にも読ませたいと思う章が多かった。
 特に「黄色い花束」は、中学校定番の「字のないはがき」や「大人になれなかった弟たちに」よりも、生徒の心に響くかなとも思ったくらいだ。太平洋戦争だけではあまりに遠い過去だが、現在の紛争地域の話題があるので、戦争や紛争にリアリティがあるのだ。
 少しだけ引用する。

◆私が子どものとき、何も知らないで、日の丸の旗を振って送り出した兵隊さんは帰ってこなかった。自由が丘の駅に行って、出征する兵隊さんに旗をふると、スルメの足を焼いたのを一本もらえた。私は、それが欲しくて、時間があると、行っては旗を振った。スルメなんて、あの頃、めったに食べられるものではなかった。知らなかったとはいえ、私は、あのとき、スルメが欲しくて送り出した兵隊さん達が帰って来なかったことを、今も申しわけなく、私の心の傷になっている。あどけなく手を振っている子ども達(注:コソボの子ども達)を裏切っては、いけないのだと、私は子ども達が手を振るのを見るたびに思う。あの女の子から貰った黄色い花は、ノートに挟んで押し花にした、コソボの記念に。

・・・心の傷は、小さいときに生ずるものもあるが、大人になってから「知らなかったとはいえ申し訳ないことをした」と生ずるものもある。
 大人の入り口にあたる中学生にも、そんな「心の傷」の存在に共感してもらいたい。
「知らなくてもよかったことまで、知ってしまうのが大人なのだ」と言えば、ちょっと格好良すぎるか。

 

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January 10, 2021

「葉桜の季節に君を想うということ」

2004年のミステリーだから「何を今更」という読書。
たまには小説を読もうということで、「ミステリー」で検索したらヒットした作品。全く予備知識のないままに手にとってみて、どんでん返しのトリックにまんまとやられた。それはともかく「咲き終わった桜も精一杯生きている」というメッセージは60歳目前の自分には心に響いた。題名の割に、文章はちょっと軽いけど。
ところで、読むまで全く知らなかったが、実家の清洲町が出てくる(今は清須市)。「名古屋の市場にある飲み屋」を探すくだりで、金山や納屋橋を探して最後に見つけたのが清洲町の「市場」。先週も歩いたJR清洲駅付近の描写にビックリした。なお、作者が同じ1961年生まれであることもビックリした。
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December 28, 2020

「人間にとって成熟とは何か」曽野綾子

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今年1年を振り返るために再読した一冊。
目次だけでも反省させられる。

◆正しいことだけをして生きることはできない
◆「努力でも解決できないことがある」と知る 

◆「もっと尊敬されたい」という思いが自分も他人も不幸にする
◆「権利を使うのは当然」とは考えない
◆「問題だらけなのが人生」とわきまえる
◆「自分さえよければいい」という思いが未熟な大人を作る
◆辛くて頑張れない時は誰にでもある

「他人より劣ると自覚できれば謙虚になれる」
「報われない努力もある」
「諦めることも一つの成熟」
「礼を言ってもらいたいくらいなら何もしてやらない」

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December 09, 2019

「PEAK PERFORMANCE 最強の成長術」

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ここ数年読んだ研究者のオールスターズのような一冊。
「フロー(熱中体験)」のチクセントミハイ、「意志力」のバウマイスター。
「ファストシンキングとスローシンキング」のダニエルカールマン。
「一万時間の法則」のマルコムグラッドウエル。
「マシュマロテスト(とは出てこなかったけど)」ウォルターミシェル。
「マインドセット」のキャロルドウエック、ケリーマクゴニガルなどなど。
帯で「大絶賛」として紹介されているのが、「モチベーション」のダニエルピンク。
安易な「一万時間のルール」を否定して、鍛錬の密度・集中度を述べた一節もあった。
やった気になる「マルチタスク」より「シングルタスク」の方が成果が上がることも述べられていた。
「ルーテイン」の効能も。

これまではメンタルな啓発本しか読んでこなかった。
しかし、当たり前だけど身体的な成長術も体得しないとパフォーマンスを発揮できない。
この本には、休息や睡眠の重要性がしっかり書かれていた。

「負荷+休息=成長」という方程式。

これは、大学時代にトレーニングの知識として学んだ「超回復」の理屈に似ている。

■超回復とは?
超回復とは、筋力トレーニング後に24~48時間くらいの休息をとることによって起こる現象で、休息の間に筋肉の総量 がトレーニング前よりも増加することをいいます。
■筋肉増加のメカニズム
筋肉を増加させるには、筋肉の破壊と修復を繰り返さなければなりません。
筋力トレーニングを行うことによって筋肉は破壊され、それから「24~48時間」かけて徐々に修復されます。
トレーニング後は筋肉が破壊されてしまうので、トレーニング前よりも筋肉の総量 は減少しますが、適切な時間休息を与えることで修復され、さらには超回復が起きて、一度減少してしまったはずの筋肉がトレーニング前よりも大きな筋肉になるのです。つまり、超回復が起こるのを待ってから次のトレーニングを行う方法が、筋肉を増加させるには理想的といえます。
■休息時間の重要性
超回復を知らない選手たちは、超回復が起こる前(筋肉の修復を待たず)に次のトレーニングを行ってしまいます。これは、筋肉の破壊だけを繰り返していることになりますので、筋力トレーニングを続けているにも関わらず、期待通 りの成果を出すのが難しくなるのです。
 超回復の原理を有効に利用することによってはじめて、筋肉は強く逞しくなります。

http://www.cramer.co.jp/training/rest_3.html


知識としては睡眠の重要性を分かっていながら、実践が怠ってきた。
締め切り前は、寝る時間を削るくらいの気迫が必要だと思ってきたが、それは。実際の成果から言えば「自己満足」にすぎない。
深夜になればなるほど、パフォーマンスは下がっていく。分かっているけど、やっているのだから愚行であったとしか言いようがない。

選択と集中、オンとオフの切り替え。余分なものを断つ絶縁能力と書くと、またメンタルに寄ってしまう。
「長期的に持続可能」であるために、とにかく身体を大事にしようと思う。

 

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February 14, 2019

「最高のコーチは教えない」

うタイトルだけ見ると、「学び合い」志向の教師たちは大喜びしてしまう。
 メジャーでも活躍した吉井理投手がピッチングコーチになってからの学びをまとめた1冊(デイスカバー21)。

 第一ステージ(初心者・新人)に該当する選手は

◆「技術の基本を細かく教えていく」
◆「自らの状況を把握できないうちは、まず基礎を徹底させる」
◆「一人前と認めるまでは、このステージで二年から三年は過ごさせる」

などとある。「教えないで任せる」は次の次のステージなのだ。

 いくつか印象的な箇所があるが、「おわりに」を引用する。

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 サッカーのコーチは、自分が教えたことを選手ができなければ、それは選手の責任ではなくコーチの責任であると考える。だから、一つの方法でできるようにならなければ、別の方法で指導しなければならない。ということは、一つのスキルを指導するためには、無数の指導方法を知っていなければならない。
 選手のタイプは無限だ。その組み合わせを考えると、指導方法の引き出しを増やす努力を怠ることは、コーチとしての存在意義を放棄することになる。コーチが学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない。
=================

 野球のコーチの多くは、こうではないと吉井氏は言う。
 教師はどうだろうか。
 引用部をしっかり自問したい。


※コーチの仕事は「教えること」ではなく、「考えさせること」であると、吉井氏は言う。
だから、彼の主張を「テイーチャー」である我々が全部受け入れるのは無理がある。

 「考えさせること」はコーチの仕事である。教師の仕事はあくまで「教える」ことだ。

とも言える。

 「究極のコーチ像は、コーチングの結果、相手が何でも一人でできるようになり、はた目から見るとサボっているようにしか見えないコーチだ」とも言う。討論の最中の向山先生のようなイメージだ。
 ただし「サボっているように見える」のであって「サボっている」とは違う。
 「最高のコーチングは教えない」という言葉を鬼の首でも取ったかのように吹聴する教師は、実際にサボってしまうのだ。
 吉井氏がいうコーチングの3つの基礎 「観察」「質問」「代行」 を怠るなら、コーチングを理由に「教えない主義」を主張する資格はない。
9784799323854


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January 04, 2019

「知的好奇心」は、波多野氏と稲垣氏の造語!

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以前、夕方のニュースで、子ども科学教室のようなイベントの紹介があって、楽しく学ぶ子供たちの様子を流していた。
 『知的好奇心』(波多野誼余夫・稲垣佳世子著 中公新書1973初版)を久しぶりに読んで「楽しく学ぶ」についてメモしていたところだったので、タイムリーな映像だった。

 自由な探索の過程で自分の能力に合わせて挑戦することが興味を維持し学習効果を高める。
 その一例として「磁石」の学習場面が挙げられている(P104~107)。
 
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 たとえば、磁石を使って、どういう物がすいつき、どういう物がすいつかないかを子どもに知らせる場面を考えてみよう。このとき、どういう性質の物が磁石につきやすいかがよくわからないうちに砂鉄や石(磁鉄鉱)を出して、「さあ、おもしろいですよ。これもすいつきますよ」といった導き方はあまり好ましくない。子どもにとっては、そのおもしろさがわかりにくい。彼のそのときに持つ「知識」に挑戦する対象として砂鉄が示されたのではないからだ。
 このようなときには、まず最初のうちは、子どもに自由に磁石をいじらせる。彼は自分のまわりの物に対して手あたり次第磁石をつけてためしてみようとするだろう。多くの場合、磁石にすいつくか否かに関して典型的な事物が試されるだろう。そうしているうち、木製の物はすいつかない、つくのは金っ気のあるもの、ピカピカ光る物らしい、という予想が形づくられるだろう。
 しばらくいろいろためしていて興味がやや低下したとみられるところで、彼らの予想に「挑戦する」事物を与えてみるのである。
たとえば、メッキされたアルミニウム製の物と、メッキされた鉄製の物を準備したり、磁鉄鉱や砂鉄を用意したりする。あるいは、棒磁石、大小のU字型磁石、電磁石などを用意するのである。
 みかけはピカピカに光っていても、磁石につく物もあれば、つかない物もある。石や砂など磁石につくものか、と思っていたらすいついた。これらは、子どもを驚かせ、さらに探究することを動機づけるだろう。また磁石を近づければ、近づけるほどそれからはなれようとすることがある。スイッチを押すと磁石のようになるが、スイッチをはなすとそうでなくなる物がある・・・。これらはさらに事物のいろいろな側面を綿密に探索することを動機づけるかもしれない。」
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(1)自由試行させる(飽きるまでの体験させる)。
(2)予想させ、自我関与させる。
(3)固定概念を崩すような難しい課題に挑戦させる。

などのポイントが読み取れる。
 
◆磁石は、他の物にくらべ、環境の「応答性」を増幅する。子どもの反応に応じて、つまり、子どもが磁石を事物に近づけるのにしたがって、事物がすいついたり、すいつかなかったり、はっきり「応答」してくれるからだ。(P107)

◆子どもの疑問に、はじめからていねいに答えすぎない、ということだ。もちろん、子どもの疑問を無視したり、適当に答えてその場をやりすごしてしまうことは好ましくない。しかし、あまりに完全な答えを与えすぎるのも問題だ。むしろなるべくヒントを与えるなどして、まず子ども自身に自分で考えさせようとすることが大切である。(P108)

◆自由な雰囲気の中で、子ども同士の積極的な相互交渉を奨励することも大切である。(P108)

などの記述を元にすると、以下のポイントも読み取れる。

(4)「応答性」のよさを心掛ける。
(5)教えすぎない。
(6)子ども相互の関わり合い(集合知)を活かす。
 

そして、「おしえる側の役割」について述べた次の指摘は耳に痛い。知的好奇心のない者には知的好奇心の旺盛な子どもは育てられないということなのだ。

◆子どもの遊びや学習上の困難の解決に援助を与える、あるいは、たえず気を配って、子どもが次の活動のために必要としているらしいものを周到に準備しておく、集団での話合いの司会をする、これらが彼らの役目である。
 この場合、指導するおとな自身が知的好奇心の強い存在になることが必要だ。子どもにいくら新しい物に積極的に取り組むことをすすめても、その当人が、未知の場面、不慣れな場面を避けてばかりいては困る。おとなのそうした態度は、いつのまにか子どもに伝わってしまうからだ。(P109/110)。


 さて、『教育トークライン』1月号(東京教育研究所)で板倉弘幸氏が「知的好奇心」について触れている。
 「知的好奇心」は、自分にとって、もはや普通名詞のようなものであったから

◆「知的好奇心」は波多野誼余夫氏・稲垣佳世子氏の両氏によって命名された

という板倉氏の指摘は全くの驚きであった。
 そういう経緯も知らず、当然のように「知的好奇心の喚起」などと口にしてきた。
「モチベーション」関連の書籍には「内発的動機付け」は出てくるが、「知的好奇心」との異同がよく分からなかった。
「内発的動機付けのことを、若い研究者は知的好奇と呼んだ」と知り、納得というよりも唖然としてしまった。

「お金がもらえるからやる」「合格できるならなる」「出世するからやる」という理由は、「外からのモチベーション(外発的動機付け)」。
「自分が好きでやる」「やりたいからやる」というのは「内からのモチベーション(内発的動機付け)」
「モチベーション3.0 」 (講談社+α文庫)の著者であるダニエル・ピンクは、内的な動機付けによるアプロ―チについて、次の4つの項目を提示している。

①because they matter, 重要だからやる
②because we like it, 好きだからやる
③because they're interesting, 面白いからやる
④because they are part of something important. 何か重要なことの一部を担っているからやる

 この「内的な動機付けによるアプロ―チ」=「知的好奇心」と理解していたわけではなかった。「重なるなあ」という程度であった。

 板倉氏の論稿の中に、向山洋一氏の「知的好奇心」に関する記述もあった。

◆「知的好奇心は、今まで何気なく見過ごしてきたことに対する違和感から生じる」

 有田和正氏の「はてな帳」の発想に通じるし、向山洋一氏がよく言われる「あれども見えず」に通じることがよく分かる。
「あれども見えず」を浮き彫りにする発問こそが、授業を知的好奇心の渦に巻き込むことがよく分かる。

〇梅棹忠夫氏の「知的生産の技術」(岩波新書)1969年初版
〇川喜多二郎氏の「発想法」(中公新書)1966年初版
〇木下是雄氏の「理科系の作文技術」(中公新書)1981年初版

なども、めちゃくちゃ古いが、もう1度読み直してみる価値があると思う。

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August 06, 2018

「10年後の世界を生き抜く最先端の技術」

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先日読んだ『10年後の世界を生き抜く最先端の教育』茂木健一郎・竹内薫著(祥伝社)の次の一節が印象深かった。

==========
私たちは模範解答ではなくて、その子の思いや考えを書いてほしいんです。でも模範解答に染まっちゃうとなかなか書けない。(中略)やがてくるAI時代は、間違いを恐れて正解だけを求める人は生きていくのが大変になる。だから、そういう模範解答を書く子どものは、そうじゃないよ、自分で考えていいんだよ、ということを言ってあげないといけない。そして、模範解答の枷から外してあげる。すると、けっこう自分で楽しく書き始めるようになって、ものすごい発想が出てきたりするわけです。
=============

 このフレーズと重ねるように、向山洋一氏の『斎藤喜博を追って』を再読する。 

教室とは、まちがいを正し真実をみつけ出す場だ。
  教室は、まちがいをする子のためにこそある。
  教室には、まちがいを恐れる子は必要ではない。

・・・まちがいを恐れてはいけないことを教室目標として年度当初に掲げ説明をしている。
 むろん、スローガンとして掲げるだけなら誰にでもできる。
 「まちがいを生かす授業」「まちがいに意味を持たせる授業」「何を言っても間違いにならない授業」を展開しなければ、子どもの意識は変えられない。

 中でも具体的に描写があるのが、参考書の模範解答を否定し、自分たちで新たな解答を創り上げていく「青森のリンゴ」の授業である。

=============
 「参考書で勉強するのも大切だけど、もっと大切なのは自分の頭でまず考えてみることだよね。事実を一つ一つ確かめたり、考えたりしてみることだよね。
 さあ、参考書はあてにならないことがわかったから、自分の頭で考えてみよう。思いつくことは何でもいいから発表してごらんなさい。」
 ぼくは、子どもの発言をうながした。
「本当に何でもいいの」と、子どもは言いながら、一人が発表すると次から次へと意見が出された。
「鉄道があるからだと思う」という意見が始めに出された。
「とってもいいことだよ。そうすると長野以北で、しかも鉄道が通っている所ということで、ずいぶんせばめられるよね」、とぼくはことさらにほめた。
「とにかく、商売だから、もうかるんだと思う」と、ある子どもが言った時に、みんなドッと笑いころげた。
「それも、大切だ。どうしたら、もうかるのかな」と質問し、商品作物が一地域で集中して作られることによって、価格が下がることをおさえた。
 どの意見もどの意見も認めていった。何を言っても認められたから、子ども達は、面白いように意見を続けた。
==================

・・・向山氏が、「どんな意見も受け入れる態度」を示しているかがよく分かる。
 だから次々に自由度の高い意見が出されていった。
 また、笑われるような子どもの意見にも、きちんと意味づけをしている。発言した子どもの自尊心が高まるよう支援していることが分かる。

◆<優等生>の頭がたいしたことがないことを示すことから、本当の授業は出発するのである。

というフレーズは、次のようにも置き換え可能だ。

◆<模範解答>がたいしたことがないことを示すことから、本当の授業は出発するのである。


 決まりきった質問をして、決まった子だけが答えるという授業とは違って、一見あたりまえに見えることを否定し<優等生>の答えの底の浅さを見せつけるところから出発するこうした授業を、子ども達は喜んだ。

・・・などは、まさに「主体的・対話的で深い学び」の具現化だ。

 「青森のリンゴ生産が日本一なのは気候が適しているから」という模範解答を否定するダイナミックな向山実践が、正解がないと言われるAI時代に対応する授業であるかが分かる。

 なお、昨今のキーワードに「ダイバーシティ」がある。
「ダイバーシテイ」=「多様性・幅広く性質の異なるものが存在すること」というキーワードで向山実践を考えてみても、

「思いつくことは何でもいいから発表してごらんなさい。」
「どの意見もどの意見も認めていった。何を言っても認められたから、子ども達は、面白いように意見を続けた」

というスタンスの授業は、まさに「ダイバーシテイ」である。

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August 01, 2018

「頑固な羊の動かし方」(ケヴィン・レーマン)

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 「1人でも部下を持ったら読む本」というサブタイトルだけなら違和感がないが、タイトルが「頑固な羊の動かし方」(ケヴィン・レーマン著 草思社刊)。
 部下を羊に例えて、どうしたら手なづけられるかを説いた本かと思うと、人間的ではないなあと、ためらいもあったが、とても参考になった。
 管理職だから読むのではない。学級担任でもぜひ読んでみるとよい。
  学級担任にはトップリーダーとなるべき心かまえとそれなりのスキルが必要だからだ。
 逆に向山洋一氏の「授業の腕を上げる法則」がビジネスリーダーにも読まれたのも、同じ理屈だ。

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 「究極のリーダーシップとは、ただ進むべき方向を示せるかどうかだけにあるのではない。その方向に群れを動かせるかどうかにあるんだ。君の部下たちが、君をリーダーだと思わなかったら、彼らは君に信頼を寄せることはないし、ついていくこともない。」

 「なるほど、分かりました。私は自分がついていくに値する人物かどうか、日々彼らに見せ続けなくてはならないということですね。」

「もし君が部下から信頼や忠誠心を得たければ、まず君から彼らを信頼し、忠誠心を示さねばならない。もし君がいい加減なリーダーシップしか示さなかったら、彼らも適当にしかついてこない。しかし、もし君が彼らにすべてを費やし、彼らのことを本当に思っていたら、彼らは心から君についていこうという気になるだろう」
P165/166
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 深い会話だなあ、
 「信頼されたければ、まず自分が信頼せよ。信頼されるに足る人間になる努力をせよ」ということか。
 付箋を貼った以下の部分も、「信頼される自分であれ」と説いている。
 
◆「人々は、一貫性があり、信頼でき、思いやりがあるリーダーを望んでいる。それらを持ち合わせたリーダーは、部下の厚い信頼や忠誠心を勝ち取ることができる」P76

◆「偉大なリーダーは、つねに部下たちに自分の価値観や使命を伝えつづけることによって、自らの理念を彼らに植えつけている。 人の気持ちはすぐに揺らいでしまうものだ。だから、良きリーダーはつねにコミュニケーションを取ることで、部下たちにそのグループにいることの意味や使命感を呼び起こしているんだ。」P77

◆「もし明日どうなるかわからなくても、今日信じることができるリーダーが目の前にいれば、不安を乗り越えることができる」P101

◆「(二つ目のポイントは)問題を放っておかない、ということだ。これまで、たった一匹の羊が群れ全体に悪影響を及ぼした例を、どれほど多く見てきたことか・・」P102

◆「新しいマネージャーは、つい部下たちをがんじがらめに管理しようとしてしまうものだ。彼らは、チームワークとは、みなが同じやり方をすることだと考えている。(中略)方向性の提示や目標の設定はしなくてはいけないが、どうやってそこまでたどりつくかは、彼らにまかせてしまうことだ」P117

◆「規律とは、罰を与えたり相手をけなしたりすることではない。それは教える、つまり指導することだ。(中略)だから、彼らの失敗を責め立てることとはまったくちがう。つまり羊飼いが群れを離れた羊めがけて棍棒を投げるのは、お前のことをいつも見ているよ、という表れなんだ。」p142

◆「だれでも自分が間違っているなどとは、指摘されたくないものだ。しかし、そのメッセージが、自分が心から信頼し、尊敬できる人からの言葉だったら、彼らはそれを、まるで信頼できる友人からの忠告のように喜んで受け入れるはずだ。だがそのためには、まず、君が信頼に値する人物であることを示さねばならない」

・・打ち込むことで、ひしひしと感じることができた。
 
  論語にあった「信なくば立たず」とも重なってくる。
  場合によってはリーダーには命を預けることにもなるのだから、預けるに足るだけの信頼がなければ、誰も命は預けないのだ。

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「採用基準」 ~この国はリーダーを育てられるのか?

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 経済産業省が提唱している「社会人基礎力」というのを初めて知った。なるほど、3つの能力と12の要素は、やや欲張りだが大切なポイントだと思う。

◆「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年から提唱しています。
企業や若者を取り巻く環境変化により、「基礎学力」「専門知識」に加え、それらをうまく活用していくための「社会人基礎力」を意識的に育成していくことが今まで以上に重要となってきています。

【前に踏み出す力(アクション)】

①主体性:物事に進んで取り組む力
②働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
③実行力:目的を設定し確実に行動する力

【考え抜く力(シンキング)】

①課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
②計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
③創造力:新しい価値を生み出す力

【チームで働く力】

①発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
②傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
③柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
④情況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
⑤規律性:社会のルールや人との約束を守る力
⑤ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力

http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html
http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/h19reference.htm

 しかし、『採用基準』(ダイヤモンド社)では、この中に「リーダーシップ」の項目がないことを厳しく批判し、日本の将来を憂えている。
 欧米では「リーダーシップ」「クリエイテイビテイ」「イニシャテイブ(自発性)」「ジャッジメント(判断力)」などが重視される。

◆日本に足りないのはリーダーやリーダーシップであると同時に、「リーダーシップに関する、重要性や必要性の認識」です。(P172)
◆国が育てるべきと提唱している人材像の概念の中に、リーダーシップという言葉がまったく出てこないというのは、今や世界の中で極めて”ユニーク”だと言えるでしょう。(P173)

 それは「マネージャー(管理職)」の仕事ではないか?
 それは「コーデイネーター(調整役)」の仕事ではないか?
 それは「プレーヤー」の仕事ではないか?
 それは「雑用係・世話係」の仕事ではないか?

といった問いに”NO”と言えないようでは、リーダーの仕事があいまいになる。

◆「リーダーの仕事は、周りの人を楽しくさせることではなく、なんとしても成果を出すことなのだ」
◆「一人でも助からないならいっそ全員で死のう」ではなく「犠牲者は出るかもしれないが、一人でも多くを助けよう』と考えるのがリーダー

という言葉は重い(P110)。リーダーは時に孤独だ。

 続いて、リーダーがなすべき4つのタスク

(1)目標を掲げる・・チームが目指す成果目標(ゴール)の定義
(2)先頭を走る・・リスクや責任を引き受ける覚悟
(3)決める・・・・検討でも分析でもなく判断し決定する
(4)伝える・・・・説明責任

◆逆に言えば、決断をしない人はリーダーではありません。伝える努力をしない人も、先頭を走る覚悟のない人も、成果目標を掲げて見せてくれない人もリーダーとは言えないということです。調査する、勉強する、考えるなどの行為は、どれほどの時間と熱意をかけてそれらに取り組んでも、それでリーダーの役割を果たしているとは言えません。「後ろから部下を見守っている」のもリーダーではありません。目標を掲げ、先頭に立って進み、行く道の要所要所で決断を下し、常にメンバーに語り続ける、これがリーダーに求められている4つのスタンスなのです。P133

 リーダーの責任は重い。
 これまで自分の考えてきた「リーダー」が、いかに調整役に近かったかを反省した。

 「ラストマン」という言葉がある、最終判断をし、最終的な責任を負うのが「ラストマン」としての、トップリーダーの役目である。
https://toyokeizai.net/articles/-/72456


 『リーダーを目指す人の心得』(飛鳥新社)による「コリン・パウエルのルール(自戒13ヵ条)」

1 なにごとも思うほどには悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ。
2 まず怒れ。その上で怒りを乗り越えろ。
3 自分の人格と意見を混同してはいけない。さもないと、意見が却下されたとき自分も地に落ちてしまう。
4 やればできる。
5 選択には細心の注意を払え。思わぬ結果になることもあるので注意すべし。
6 優れた決断を問題で曇らせてはならない。
7 他人の道を選ぶことはできない。他人に自分の道を選ばせてもいけない。
8 小さなことをチェックすべし。
9 功績は分けあう。
10 冷静であれ。親切であれ。
11 ビジョンを持て。一歩先を要求しろ。
12 恐怖にかられるな。悲観論に耳を傾けるな。
13 楽観的でありつづければ力が倍増する。

 リーダーが、「カリスマ」ぐらいならいいけど、「ワンマン」になったら困るから、あえて社会人基礎力にリストされていないのだとしたら、極めて嘆かわしいことだ。
 あいかわらず日本は

「出る杭は打たれる」
「護送船団型」
「調整型の人材が重宝される」

ということになる。それがグローバルスタンダードではないのだということを、しっかり肝に銘じたい。
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