「読めば分かるは当たり前?」犬塚美輪(ちくまプリマー新書)
「読解力の認知心理学」という副題で、読解する(読み取る)過程を詳しく解説している。
(1)1文字1文字読む段階
文字を一つ一つたどる「拾い読み」では、内容理解ができるはずがない。
音をつなげて一つの単語として把握するのが第一歩で、単語や文節のまとまりで読めるように、一斉音読を繰り返すことが大事だのだということが分かる。
(2)単語のかたまりで読む段階
理解できそうな単語が並んでいる英語や古典の文章をスラスラ読めたとしても,内容が分かっているとは限らない。スラスラ「読める」と、内容が「読み取れる」は違う。
「読めても意味が分からない」とは、語彙やスキーマ(先行経験・先行知識)の問題でもある。生活経験が少ない子は単語や文章の意味が分からない。
特筆すべき課題は「学習言語」。「学習言語」が不足していると、日常生活での会話は全く問題ない子でも、教科書に書いてあることの意味が読み取れない。
(3)文節のかたまりで読む段階
単語の意味が分かっても、単語と単語のつながりが分かるとは限らないのは「付属語」の問題だ。
付属語によって文意が変わる。
「僕は、君が、好きだ」と「僕を 君が 好きだ」は1文字違いで主格が逆になる。
「私は あなたが 好きよ」と「私は あなたは 好きよ」ではニュアンスが違う。
通知表の所見で、「宿題はちゃんとやってきます」と書いてあると「宿題以外はやってこないことを言いたいんだな」と思ってしまう。「は」は強調の副助詞だからだ。
受け身表現が分からない。倒置表現が分からない。婉曲表現が分からない。
単語だけを選ばせる穴埋めワークシートでは、助詞の差異に鈍感になる。助詞を無視してキーワードだけ覚えて理解した気になっていると、大きな間違いを犯すのだ。
「白い時計台の前のベンチで待っています」に2通りの読み方があることが分からないと、平然と誤解を招く発信をしてしまうし、誤解した子のクレームが理解できない。
SNSのちょっとしたトラブルも「言葉が足りない・言葉を正しく使えない」が多いが、それらを含めて「読解力」の問題なのだ。
(4)ボトムアップの文章理解プロセス
文字が読め、単語が分かり、一文が分かっても文章が分かるとは限らない。文章が長くなると「ワーキングメモリ」を使うからだ。文字の読み取りが十分でない子は、文字同定でメモリを使う。
◆ スラスラ読めない子どもの場合は、文字を同定するためにワーキングメモリをたくさん使ってしまって、文章全体の表層をうまく作れないため、読解や国語の成績も低くなってしまいやすいのです。P79
・・・なるほど。新井紀子氏が書いていたワーキングメモリの記載とも重なってくる。
◆まず、「××ページ」という数字を聞き取るところで5%位脱落します。
実際に教科書の××ページを開くというところでさらに10%位脱落します。
「〇〇の値」というのは、そこまでの授業の文脈から理解できるはずですが、「何の値を求めればいいか」がわからず、さらに10%位 脱落する
・・大げさのように聞こえるかもしれませんが、実際の中学1年生の授業観察しているとそのような印象を受けます。
「シン読解力」P181
知らない単語が多ければ、それだけ読みがつかえる。
言語学者のフーとネイションの実験の結果、知らない単語が20%になるときちんと理解できた参加者はおらず、10%でもほとんどの参加者が内容を理解できず、適切な理解のためには文章のうち98%の単語がわかっている所があると結論づけている。
98%の単語が分かっている状況を、小学校は準備できているだろうか。
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◆「したがって」のような単語は、教科書や新書などの知識を伝達する文章でよく用いられますが、日常生活の中で「したがって」という言葉はあまり使いませんね。同じような順接の意味を表す接続詞としては「だから」「それで」といったより日常生活で使われやすいものがあります。こうした学習語彙がわからないことは、文章で示された内容の理解を妨げることが研究により明らかになっています。(中略) 学習語彙がわかることは単語理解とその後の文章理解に重要であるにもかかわらず、見過ごされやすいと言えるでしょう。P94
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たしかに、算数の「1人あたり」とか「等しく」「かさ」などは、ピンとこない子が多いのだと思う。
授業中 は、馴染みのある「生活用語」に安易に言い換えるのではなく、各教科の「学習用語」を多用する方がいいのかもしれない。
語彙を増やすための「読書」についても「知識を説明する文章を読んで理解したいのであれば、それに関わる語彙が身に付いている必要所があります」とある。いくら軽い物語をたくさん読んでも、論理的な学習語彙は増えない。だから、読書好き=学力が高いとは言えないのだ。
先行オーガナイザー
「これから 読むのはこういう内容ですよ」と前置き文を置いておくことで、その前置き文を枠組みとして利用して、文章内容の表象を構築していくことが分かっています。P155
・・・文章内容についての予備知識を与えておくような「リード文」が該当するだろうか。
新書を読む前の予備知識として、上記の書き込みを読んでおくとスムーズかもしれません。

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