November 14, 2023

「言葉の向こう側」を読む

 国語の読解力のアドバイスから、処世術というかコミュニケーションのあり方を学んでいる。

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人は心のなかで思っていることの一部分しか言い表すことができない。

だから、その言葉を受け取った人間は、その言葉を理解したことに満足するだけではなく、その言葉の向こう側を想像しなくてはならない

  「ぼっち現代文〜わかり合えない私たちのための読解力入門」小池陽慈(河出書房)P152

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、「原因」があって「心情」が生じ、その「心情」が「言動」になって現れると筆者は言う。

 しかし、全ての心情が「言動」に現れるわけではない。

 目に見える言動を読み取って、そこで満足していてはいけない。

 日常的な例でいえば、目の前で転倒した子に「大丈夫?」と聞いて「大丈夫」と返されたとしても、本当に大丈夫かどうかは分からない。みんなの前で転倒して恥ずかしいかも知れないし、いくら痛くても大袈裟にしたくないかもしれない。

 いじめでも同じだ。

 「いじめられていないか?」と聞かれて「ありません」と返されたって本当かどうかは分からない。深刻ないじめの場合は、むしろ簡単に人に言えないものだ。本当に苦しんでいる子なら「察してくれよ」とSOSを出しているかもしれないのだ。

 「言葉の向こう側を想像する」とは、そういうことだ。

 人の言葉の裏を読む、真意を読むのは難しい。

 でも言外の気持ちを読むことは、大人の作法としてはきわめて必要なスキルなのだ。

 

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 他者の〈心情〉を想像する時、私たちは、自分自身ならこう感じるだろうという思いを、勝手に、他者の心の内に投影しているだけなのだ(中略)

 こうして、うかがい知ることのできないはずの他者の〈心情〉を、あたかもその他者に成り代わったかのごとくに代弁する。そのことによって、本当はまったく別のところにあったかもしれない他者の真の思いに耳を傾ける回路が、絶たれてしまう 

  前掲書P190・191

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 このくだりに着目したのは、小見出しに「代弁という暴力」と書かれていたからだ。

 これは衝撃的なフレーズだ。

◆ごんは悔しかった違いない

◆兵十はショックだったに違いない

のように、書かれていない心情を想像することがある。

   しかし、元々は「書いてないから分からない」のだ。

   だから、心情の想像が「代弁の暴力」にならないよう、できるだけ謙虚でなければならない。

   人の心を勝手に想像する(代弁する)のは、そもそも不遜な行為なのだという気持ちを持っていたい。

 

※道徳の授業で、登場人物の心境を想像させると、多くの場合「自分の経験と重ねた言葉」が出る。

だから、道徳の指定研究校にいた時、「登場人物の気持ちになって考えよう」と、「あなたならどう思うか」は、どっちで問うても同じ結果になるのだと結論づけたことを思い出した。

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November 08, 2023

What と How

「22歳からの国語力」 (講談社現代新書) 川辺秀美著 2010/1

◆あなたは仕事でいったい「何を」「どのように」実現したいのですか?

・・・川辺氏は、What と How が大事なのだと述べている。 

Howがなければ、空論で終わってしまう。

特に、22才の就活生(卒業生)なら、具体的なHowを語る必要があるのだ。

How=どのように自分らしさを出すかは、自分の存在理由の説明でもある。

 

そしてWhat、何がしたいか。

この「何」を端的に言い切れない人は自分探しで迷走してしまうタイプ。なるほど!

 

①誰が ②誰に ③何を ④どのように ⑤いつ 

⑥どんな文脈で(状況で・事情で)

⑦結果

 

小学生でも、読み・書きにおいて5W1Hを意識させているが、5W1Hが形式的になると役に立たない。

それぞれの意味と意義をしっかり考えて使いたい。

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「原因→心情→言動」の3点セットで考える。

「ぼっち現代文 わかり合えない私たちのための読解力入門」小池陽慈(河出書房)2023年10月初版〜

 小池氏の主張を参考に、自分なりに書いていきます。
 3年生国語「おにたのぼうし」(あまんきみこ作)のクライマックス。
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「あたしも、豆まきしたいなあ」
「何だって?」
 おにたはとび上がりました。
「だって、おにが来れば、きっと、お母さんの病気が悪くなるわ」
 おにたは 手をだらんと下げて、ふるふるっと、悲しそうに身ぶるいして言いました。 
「おにだって、いろいろあるのに。おにだって・・」
 氷がとけたように、急におにたがいなくなりました。後には、あの麦わらぼうしだけが、ぽつんとのこっています。
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 この後、「おにた」は登場しない。
 何も知らない女の子は帽子の中にあった黒い豆をまいて節分の鬼退治をする。
 突然、主人公が作品からいなくなるレアな展開だ。さすが、あまんきみこ。
(1)心情が分かる。
「悲しそうに」と書いてある。
 童話なので、「おにた」の心境が明示されている。
 もう少し高学年向けなら、あえて「悲しそうに」とは書かないだろう。
 三田誠広風に言えば「悲しいことを表すのに、悲しいと書いてしまったら小学生レベル」ということになる。
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 おにたは 手をだらんと下げて、ふるふるっと身ぶるいして言いました。 
「おにだって、いろいろあるのに。おにだって・」
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・・・これでも「おにた」の心情は想像できる。
 「○○○そうに身ぶるいした」と空欄にして考えさせたら「悲しそうに」以外にも「くやしそうに」「つらそうに」「さびしそうに」「ざんねんそうに」といった心情語が列挙できるだろう。
 どこまでが許容範囲かは難しいが、似たような心情語を列挙させることも大事な「語彙」の学習になる。
(2)言動が分かる。
 ①「何だって?」
 ②とび上がりました
 ③手をだらんと下げて
 ④ふるふるっと身ぶるいして
 ⑤「おにだって、いろいろあるのに。おにだって・・」
・・・②③④は行動、①⑤は言葉。合わせて「言動」となる。
 この言動を読めば、「悲しい」という表現が出てなくても、およその心境は読み取れる。
 「書いてなくても、行動や言葉から気持ちは読み取れることがあるんだよ」と言われても
「書いてないから分からない」と言い張る子がいるだろう。自閉症傾向の子が苦手とする設問だ。
 だからこそ、今回のような分かりやすい例で、「読み取る」ではなく「汲み取る」訓練をするとよい。
 今回は「悲しそう」って書いてあるから「悲しそう」って分かる。
 でも、この場合、「悲しそう」って書いてなくても、「悲しい・寂しい・辛い」そんな感じは伝わるよね。
 普段の生活でも「ああ、僕は悲しい」って言いながら歩いている子はいないけど、態度や言い方で「あの子、なんだか今日は悲しそう」って分かることあるよね。(無論わからない事もある)
 この場合の「おにた」の悲しさが分からないとしたら、それは、悲しさの原因となるストーリーが正しく読み取れていないからかもしれない。
(3)「原因」が分かる。
 「原因」があって、「感情」が生じて、「言動」として現れる。
 だから、「おにたは、なぜ悲しくなったのでしょう」という原因を確認する必要がある。
 悲しい理由は、ここに示された文面だけからは全部は分からないが、それまでの記述部分と重ねればおよそ分かる。
◆おにたは鬼であることを隠して女の子にやさしく接していたが、その女の子から鬼退治の豆まきがしたいと言われ悲しくなった。
◆おにたは お母さんのために鬼退治の豆まきがしたいという女の子の願いを聞いて、悲しくなった。
ということになる。(まとめ方はさまざまだ)
原因ー心情ー言動のフルコースなら、次のようになるだろうか。
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「あたしも、豆まきしたいなあ」
「何だって?」
 おにたはとび上がりました。
「だって、おにが来れば、きっと、お母さんの病気が悪くなるわ」
 豆まきをしたら、おにたは女の子に追い出されることになります。
 おにたは 手をだらんと下げて、ふるふるっと、悲しそうに身ぶるいして言いました。 
「おにだって、いろいろあるのに。おにだって・・」
 氷がとけたように、急におにがいなくなりました。後には、あの麦わらぼうしだけが、ぽつんとのこっています。
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 なお、この「おにだって・・・」の省略部分はそれほど難しくない。前半部で同じような「おにた」のセリフがあるからだ。
◆「人間っておかしいな。おには悪いって、決めているんだから。おににも、いろいろあるのにな」
 鬼だって「いろいろ」とは、悪い鬼もいれば、いい鬼もいること。
 お母さんに病気をもたらす豆をまいて鬼もいれば、おにたのようにいつも人間にやさしくしている鬼もいること。
 女の子にそれが分かってもらえなくて、「おにた」は「悲しい」という流れになる。
 しかし、本文に「悲しい」という心情語がなかったら、ここは「絶望に震え」とか「怒りに震え」のような強い感情語を入れたくなるところだ。こおで使われる「悲しそう」という心情語は、大人が読み味わうにはちょっと単純だ。
 
 それはともかく、小池氏の言うように、
◆登場人物の心情を考えるときには、「原因→心情→言動」の流れを意識する◆
が大事であることは、よく分かった。 
 私は、それに加えて
◆「原因」「心情」「言動」は、それぞれ省略されていることがあるから、その際は自分で補おう
という心意気が大事だと思っている。
 「原因→心情→言動」の3点セットが記された作品は、むしろ幼稚だからだ。
「ぼっち現代文」は、「14歳の世渡りシリーズ」の一冊。物足りないところがあるので、補足しながら読み込もう。
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November 03, 2023

改めて「ミラー・ニューロン」を学ぶ その4

楽しそうに振る舞うのが一番!

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◆両親が楽しそうにしていると、それを見ている子どもは、ミラー・ニューロンを興奮させて「楽しそうだ」と感じて、真似をしますからね。
 とすると、両親自身が楽しく思っていないことを子どもにさせるということは非常に大変なことだ、ということがお分かりいただけるかと思います。
 「少しの努力で『できる子』をつくる」池田清彦(2011年10月初版)講談社文庫 p72
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・・・・楽しいことをやっているから真似したくなり、楽しいことを真似するから習得していく。
「教育はまさに真似をさせることだし、真似することがなければ、文化も伝承していきません」という指摘は重い。
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 誕生から一歳半位の期間に、いかに「真似ることの技量」を身につけさせるか、それがとっても大事なことなんです。この頃に「真似することは楽しいことだ」と思わせると、子どもはその後に伸びますよ。もしも子ども自身が真似することを楽しくない、と思い込んでしまうと、その子はうまく成長することができないかもしれません。だから一番重要なことは、母親が「楽しい」と思って行動すること。それを見て赤ちゃんは幸せな気持ちになれるんです。p74
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・・・なるほど。大人が楽しくてポジテイブな行動に努めると、子供はそれを真似て幸せでポジテイブな気持ちになれる。
 なんと素敵な「笑顔の連鎖」ではないか。
 今回、「ミラー・ニューロン」について読んでいて、「真似させる」よりも「楽しんでいる」が重要なのだと思えてきた。
 ミラー・ニューロン発見のきっかけとなった実験室でのジェラート。
 研究員がジェラートをおいしそうに食べているのを見て、サルは欲しくて欲しくてたまらなくなったに違いない。
 「きっと何か特別おいしいものを食べているのだ」と思ったに違いない。
「楽しい感情」は「楽しい感情」を呼ぶ。
「楽しい行動」は「楽しい行動」を呼ぶ。
「授業は楽しいことをするに尽きる」という境地と繋がっている。
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改めて「ミラー・ニューロン」を学ぶ その3

「少しの努力で『できる子』をつくる」池田清彦(2011年10月初版)講談社文庫
 幼児の発話について、ミラー・ニューロンと関連づけた解説がある。
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◆子どもはそうこうしているうちに、乳児語のようなわけのわからないことをグジグジと言いはじめます。これを専門的に喃語(なんご)といいます。これは大人の真似をしているんです。自分でも意味が分かっているわけではないんだけれども、何かグジグジと「発声の練習」をやっているんですね。だからそのグジグジとした乳児語はそのまま言わせておいて、母親もグジグジと真似をして同じように言ってあげましょう。そうするととっても喜びますから。
 これが先ほどお話ししたミラー・ニューロンの働きです。母親が自分の発声と同じことをしている、と気付くことでミラーニューロンが興奮します。そこで自分が母親の真似をするとさらにそのミラーニューロンは興奮して、その行動自体が確固としたものに固定されていくわけです。そういうふうにして初めて、赤ん坊は徐々に発話ができるようになっていきます。p 71
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・・・真似すると興奮する。真似されるのも興奮する。
 「ミラー・ニューロンが興奮して、その行動自体が確固としたものに固定されていく」
という指摘に、どんな活動が当てはまりそうか列挙してみた。
 教室の音読、話す聞くスキル、暗唱、合唱、百玉そろばんの数唱、英会話のチャンツ、「いただきます」「おはようございます」「さようなら」、応援の掛け声、・・・
 みんなで声をそろえると一体感があって心地よい。
 みんなが同じ発声をすることで、ミラー・ニューロンの興奮を呼び起こしているということなのだろうか。
 上記の喃語(グジグジ)の復唱は、お母さんが乳幼児に「それでいいんだよ」のサインを送っているのだと思う。
 真似されてうれしいのは「承認欲求」も関係しているに違いない。

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改めて「ミラー・ニューロン」を学ぶ その2

「少しの努力で『できる子』をつくる」池田清彦(2011年10月初版)講談社文庫

 ミラーニューロンを活かすと、どんな教育が成り立つかを述べた箇所がある。p26-27
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◆お母さんが楽しそうな行動をして、それを子供がやりたがってミラー・ニューロンの回路が発達する、ということが非常に大事になってくるんです。それらの回路の発達はおそらく幼児期くらいまでに決まってしまうので、乳児幼児期の両親の関わり方は非常に重要になります。
 親が楽しそうに学んでいる様子を見ると「自分もやりたいな」と思って興奮してしまうような、そんなミラー・ニューロンの回路を発達させてやれるならば、それはとってもいいことでしょう? 
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・・・親や教師が笑顔で過ごすこと・なんでも楽しそうにやることの意義が、ミラー・ニューロンで説明できる。
 確かに、何をやるにしても「うわー、すげー面白い!」と先生が大袈裟に言うと、子供たちは「見せて見せて」とか「やらせて、やらせて」と寄ってくる。
 「周りの人間が楽しそうに見えた方が、ミラー・ニューロンは発達するでしょう」という指摘もあって、これも納得。
  楽しい「感情」が伝播するのと同じように、楽しそうにやっている「行動」も伝播していくのだ。
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改めて「ミラー・ニューロン」を学ぶ (1)

「少しの努力で『できる子』をつくる」池田清彦(2011年10月初版)講談社文庫

図書館で見つけた一冊。
「学ぶこととは、真似ることです」の章は、ミラーニューロンについて詳細に書いてある。
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◆「学ぶ」ということに関係する面白いニューロンがあります。高等な霊長類だけにある「ミラー・ニューロン」と呼ばれるニューロンです。
 これを発見したのは、サルの前頭葉の後ろのほうにある運動前野を調べていた研究者です。実験対象のサルの運動前野が興奮するとブザーが鳴る、という仕組みを作ってサルを観察していたのですが、これが一向になりません。飽きてしまった研究者がジェラートを舐め始めると、なんということか、途端にブザーがブーブーと鳴り始めたんです。研究者たちもこれにはびっくり。何が起きたんだってね。そこで、サルにもジェラートを1口食べさせてやったら、あろうことか、もっとブザーが鳴ったのです。
 つまりサルにとっては、 人が食べているのを見て興奮する神経と、自分が同じことをして興奮する神経とは同じだったんです。(中略)これこそが、ミラー・ニューロンです。高等なサルや人間などにしか存在しないんです。p25-26
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「人が食べているのを見て興奮する神経と、自分が同じことをして興奮する神経とは同じ」

・・・ミラー・ニューロンをこんなに明快に解説してもらえてスッキリした。
 共感する、追体験する、感情移入するというのも同じ意味合いなのだろうか。
 池田氏は、続けて卑近な具体例で説明する。
◆変な話になりますが、人間はポルノを見て興奮しますよね(笑)。これはミラー・ニューロンのおかげなんです。カミキリムシは、他のカミキリムシが交尾している様子を「見て」も興奮はしない。特殊なフェロモンを感じないかぎり、興奮しません。だけど人間は、自分がしたいんだと思うことを他人がやっている様子を見ると、興奮するんです。
・・・ポルノでなくても伝わるだろうけど、池田氏は刺激的な具体例で分かりやすさを演出している。
 「国語の授業で、文学作品の世界を追体験する・感情移入する」
 「道徳の授業で、登場人物と同じように喜怒哀楽の感情を抱く」
 「学級会で、『悪口を言われたら、どんな気持ちになるか』を考えさせる」
は、やはりミラーニューロンに関係するんだろうな。
ミラーニューロンの考察はさらに続きます。
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June 25, 2023

趣意説明の原則が大事なワケ

「子供を呪う言葉、救う言葉」(出口保行著)SB新書2022年8月初版

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 法務省で出会った10,000人の犯罪者たちに学んだ事をベースに書かれたという一冊。どの章も学びが多かった。
 心理学等の本で出てきた用語も出てきて復習になるが、「対応が悪いと、こうやって犯罪につながってしまうのだ」という危機感があって、ちょっと怖い。「ケーキの切れない非行少年たち」の読後感に近い。
第1章 「みんなと仲良く」が個性を破壊する
第2章 「早くしなさい」が先を読む力を破壊する
第3章 「頑張りなさい」が意欲を破壊する
第4章 「何度言ったらわかるの」が自己肯定感を破壊する
第5章 「勉強しなさい」が信頼関係を破壊する
第6章 「気をつけて!」が共感性を破壊する
と見出しだけでも刺激的だが、とりわけ第2章の「事前予知能力」の解説部分が印象に残った。
向山先生が指摘された「趣意説明の原則」=「号令・命令」ではなく「訓令」が大事なのだということがよくわかるからだ。
◆本人に考えさせる少年院の先生は、常に本人に考えさせる声かけをします。「この間も言っただろう。早くやれよ!」なんて言ったりしません。「どうして今これをやらなきゃいけないんだと思う?」と繰り返し問いかけながら物事を進めます。特に事前予知能力が乏しい少年たちですから、「早くやれ」と言って何かをやらせたところで、社会への適応がうまくいかなければ意味がありません。P76
理由を説明しないただの「号令・命令」では、子供は育たない。
自分で判断する場数がないと自律できない。
常に考えさせる「趣意説明の原則」が大事で、趣意を伝える「訓令」によって育つのが「事前予知能力」。
簡単に言うと「段取り力」だ。
以下のやりとりは「コーチング」にも近い。
◆事前予知能力は、生まれながらに持っているものではなく、発達の中で身に付けていくものです。親は「急がないと学校に遅刻してしまう」「約束の時間に間に合わなくなってしまう」と必要性を理解しているわけですが、子供には難しいのです。
ですから、「学校まで歩いて15分かかるから、8時には出ないと朝の会に間に合わないよね。」「8時に家を出るためには、どうしたらいいかな」というように、早くするべき理由を伝えて考えさせなければなりません。
これが事前予知能力のトレーニングになります。(中略)事前予知能力が育たないと、「常に場当たり的で後先を考えない刹那的な思考になってしまいます」p75
◆事前予見能力を育てるためには、日常の中で「逆算して考える」ことをさせればいいのです。大人は自然にやっていることですが、子どもは現在に集中しており、将来の目標から逆算すること慣れていません。
・・・「逆算」は大人でもなかなか難しく、自転車操業(刹那的な思考)になる人は多い。
その刹那的な発想が、事件を引き起こす。教員の不祥事も同じだ。
◆非行少年の面接を行っていると「そんなことをしたら、すぐに捕まることくらいわかるだろうに」と思うようなケースはたくさんあります。彼らに共通しているのは「事前予見能力の乏しさ」です。つまり、「そのときだけ楽しめればいい」「そのときだけ苦痛から逃れられればいい」といった短絡的な思考に支配されているのです。p73
「早くしなさい」が先を読む力を破壊する という第二章のタイトルは意味は深い。
 他の章も深いが、とりあえず第二章のみ検討しました。
 第二章「『早くしなさい』が先を読む力を破壊する」は、以下の項目で展開しています。
見出しだけでも刺激的です。。
・犯罪者に欠けている事前予知能力とは?
・「 早くしなさい」はなぜダメなのか
・逆算して考える習慣づけ
・能力はあっても、何をしていいかわからない人たち
・将来を考えさせる前に、現在の状況を理解する
・困難を想定して対応力をつける
・自分で自分のことを決めるのがなぜ難しいのか
・柔軟な思考力を身に付けるためには

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June 16, 2023

「先生、親の目線でお願いします!」

保護者への連絡相談は慎重に
 担任の心ない一言で保護者が敵に回ることは多い。とりわけ特別支援に関わるような相談事や報告でモメる場合が多い。
 そのことに関する書籍が勤務校にあった。
 保護者の光江さんという方が体験した次の例は、同業として恥ずかしいが、実にありがちだと思う。
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「箸がまだじょうずに使えませんね」
「洋服の前後がまだわからず、着替えに時間がかかりますね」
「引き出しから色鉛筆と定規を持ってくるように伝えても、二つの指示は理解できないようで、どちらか一つしか持ってこられないですね」
といった、見ていれば誰でもわかることを伝えてくる担任に不信感を深めています。
 ただ、光江さんがいら立っているのは、担任がそうした事実を 伝えてくるからではありません。伝えてくる内容が子供の行動のみで、その行動に対して教師として「どうしたのか」がないことにあります。
 保護者は行動のみを伝えられても、「だから何?」「親に何をしてほしいの?」という気持ちしか、わき上がってきません。それが保護者に共通する思いです。
 光江さんが望んでいることは、そうした行動に対して「どのように指導したのか」「どのような支援を行ったのか」、教師としての態度を聞くことです。そうした話がされて初めて、素人と教師の違いがわかるからです。
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 通常学級でも、懇談会で
「漢字が苦手なんですよね」
「くり下がりの計算がまだまだなんですよね」
という事実だけを伝えれば
「『すみません、家庭で指導します』って言えばいいんですか?」
「うちの子供に塾へ行けっていうことですか?」
ということになる。
「それを何とかするの先生の仕事じゃないんですか?」
ということになる。
 マイナスの事実の報告だけなら、保護者にとって嫌味でしかない。
 この章のタイトルが「保護者が求める専門性」。
 子供を向上させる手立てや子供が向上した事実を報告するのが教師の専門性。
「あれができない、これができない」とダメ出しすることは教師の専門性ではない。
 併せて言えば
「いつも元気です」「放課はいつも遊んでいます」「落ち着いて生活しています」
ぐらいなら、先生に言われなくても親は分かっている。
見ていれば誰でもわかることを伝えてくる担任に不信感を深めています。
というくだりに、ドキッとしてしまった。
スイミングに通ってる子に「泳ぎが得意ですね」
音楽教室に通っている子に「楽器演奏が上手ですね」
英語塾に通っている子に「英会話上手ですね」
習字に通っている子に「字が上手ですね」
などは、保護者にとっては、言われなくても分かっていることだ。
中には気分をよくする方もいるだろうが、そんなところしか見つけられないのかと評価を下げられてしまう。
これらは教師の指導結果技量ではないのだから、保護者としては担任に感謝しようがない。
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April 15, 2023

『秒で伝わる文章術』宮崎直人(フォレスト)

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◆「人間は文章を読まない」という前提で「どうすれば伝えたいことが伝わるか」を考える。

◆たくさん伝えることは迷惑。読み手の立場になって選別する。

◆ポイントは3つまで。

などの指摘に衝撃を受けた。

 

長く書くことは単なる自己満足に過ぎない。

相手意識(読み手の脳に負担をかけない)を考えたら、まさに「言葉を10分の1に削れ」だ。

 

◆とにかく短く書く・言いたいことを絞る

◆一記事の目安は 600ワード、見出しは15.5字以内

◆What to say 「何を言うか」ではなく、 How to say「 どう言うか」

 

ジョブズの次のエピソードは、たくさん情報を提供しても1つしか受け取れない 「一時一事の原則」を示している。

◆同時に5枚の紙の玉を投げられたらキャッチできないが、1枚ならキャッチできる。

 

以下のアドバイスは、要約指導のスキルと似ている。

◆ 1文を短くする=ワンセンテンスワンメッセージ。

短い言葉に言い換える 。

◆冗長な言い回しを避ける(ていねいすぎる 敬語は不要)。

◆単語の重護を避ける。

◆文字数を1文字でも減らす。

 

また、「読む」より「見る」の観点から

◆行間・改行・段落分けで余白を生かす

とアドバイスがある。

向山洋一先生の文章が読みやすかったのは、この余白が見事だったからだ。

なお「平仮名・漢字は 7:3の割合」とのアドバイスもある。

そこまで考えるものなのかと唸ってしまった!

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