June 02, 2023

「獲得可能性」と「類似性」とは?

    2016年4月の「小三教育技術」にあった中野信子氏の連載。

 「保護者に好印象を与え、信頼を得るためには」というタイトルで、「獲得可能性」と「類似性」というワードの解説をしていた。

①「獲得可能性」とは、相手が持っているものに対して、自分もそれらが得られるのではないかという可能性のこと。

「これくらいなら私にだってできそうだ」と相手に見下されてしまうこと。 

   こんなレベルでお前は教師をしているのかという「妬み」でもある。 

   圧倒的なスキルや知見があれば、相手も立ち向かう気を失う。しかし、相手にひとたび「大したことない先生だ」と思われてしまうと、信頼回復は困難だ。

②「類似性」は、性別・職種・趣味嗜好などが似通っていること。

    自分と同じくらいの人が、自分より優れたものを手に入れていると、より悔しい感情が生まれやすいそうで、これも「妬み」の根源だ。    保護者にマウントされる教師の2大要因であると言えるだろうか。

    論稿には、次のようにある。

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「獲得可能性」と「類似性」を遠ざけることができれば、保護者の「妬み」「嫉妬」の感情を「憧れ」に変えることもできます。

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 逆に言うと、相手にひとたび「この先生は大したことない」と思われてしまうと、信頼回復はかなり困難だ。

    保護者と教師の話題だが、部下と上司でも同じだ。子どもと担任でも同じことだ。

「このレベルで上司なんて信じられない」と見下されてしまうと、どんな言葉も入らなくなる。

A「嫉妬」する気が失せるほどの実力差を見せる。

B「嫉妬」を「憧れ」に転換できるように、手を打つ。

と書いてみると、AよりBの方が困難であることがよく分かる。  

   一度下がるから「信頼回復」のエネルギーが必要になる。

    信頼が下がらないように行動する方が、一度失った信頼を回復するために行動より容易なのだ。

    圧倒的なスキルや知見があれば、相手も立ち向かう気を失う。   

 日々、相手が太刀打ちできないスキルや知見を高める努力を続けるしかない。むろん、威張らず、驕らずだ。

    謙虚さのない者は、憧れの対象にはならない。

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May 22, 2023

国語の授業の中でのソーシャルスキル

光村図書では、2011年度の国語教科書から「アサーション」という概念を導入した。
「コミュニケーションコラム」とよばれるページである。
光村のWEBマガジンでは、ソーシャルスキルの1つとして「アサーティブ」を位置づけている。
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相手を尊重することは大切です。しかし、相手を意識しすぎるあまりに、自分の感情を抑えてしまい、不満が残るようなやり方は適切とはいえません。Win-Winの関係、すなわち「自分にもいい、相手にもいい」という関係をつくっていくことが大切です。そういった関係を、「アサーティブな関係」といいます。
アサーティブな関係をつくるには、相手の気持ちや立場を尊重しながらも、自分の気持ちを伝えることが大切です。トラブルが起きたときに、丸く収めようとするあまりに相手の言い分を100%受け入れることもありますが、それは先々を考えるといいこととはいえません。言い訳ではなく、説明をすることも大切なのです。
相手も大事だけれど、自分のことも大切にしていこうという考え方があることを忘れないでほしいと思います。
第1回 ソーシャルスキルとは
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 現行では、次の5つのコラムが設定されている。
◆2年「うれしいことば」・・どんな言葉をもらうと嬉しいかな?
◆3年「きちんとつたえるために」・・誤解のない言い方
◆4年「あなたなら、どう言う」・・注意の仕方
◆5年「意見が対立したときは」・・意見の主張の仕方
◆6年「伝えにくいことを伝える」
・・・学年系統で流れているが、学年を超えて触れて「折に触れて、何度でも」取り組むのがいいと思う。
6年の「伝えにくいことを伝える」などは、中学年の方が、すんなり入るだろう。
※「アサーショントレーニング」の考え方
アサーションとはコミュニケーション・スキルの1つで、当初は自己主張が苦手な人を対象としたカウンセリング技法として実施されています。
アサーションの理論では、コミュニケーションのタイプを大きく3つに分けて考えます。
A:アグレッシブ(攻撃的)
  自分のことを中心に考え、相手のことはまったく考えない頭ごなしに叱責をするようなやり方。自分の気持ちは抑えることなく表現していますが、相手の気持ちは考慮していないので、相手は不快な思いをします。相手に選択の余地のないような状況で頼み事をするなど、巧妙に自分の欲求を押し付けて、相手を操作して自分の思い通りに動かそうとする態度もアグレッシブな方法と言えます。
 
B:ノンアサーティブ(非主張的)
  自分の感情は押し殺して、相手に合わせるようなやり方。いつも友人に雑用を頼まれて嫌なのに、はっきりと断れずに引き受けてしまう態度。このような態度は一見すると、相手を配慮しているようにも見えますが、自分の気持ちに率直ではなく、相手に対しても率直ではありません。
  自分の気持ちを抑え続けていると、次第に欲求不満がつのり、相手に対して「譲ってあげた」という恩着せがましい気持ちや、「人の気も知らないで」という恨みがましい気持ちになってしまいます。
C:アサーティブ
  自分の気持ちや考えを相手に伝えるが、相手のことも配慮するやり方、自分も相手も大切にしたやり方。攻撃的でも、非主張的でもなく自分の気持ちやその場にふさわしい方法で表現します。しかし、お互いが率直な意見を出し合えば、相手の意見に賛同できないことも出てくるでしょう。そのときに、攻撃的に相手を打ち負かしたり、非主張的に相手に合わせたりするのではなく、お互いが歩み寄って一番いい妥協点を探ることがアサーティブなあり方であると言えます。
・・・勤務校の1つは学校全体でSSTに取り組んでいる。
各教科、行事、業前、日常生活のあらゆる場面で、互いに注意し、切磋悪魔できる人間関係を築きたい。業前の時間だけでソーシャルスキルを養おうとしても難しい。
教室に開放度があると「本音を語れる学級風土」が成り立つし、
「自己開示」があると、個人のプライベートな話題も、失敗談も口にできる。
 
女子で多いトラブルは「直接相手に文句が言えなくて、自分を抑えてしまう」だ。
そうしたトラブルが「あるにちがいない」という前提で、教育相談にのぞみ、1学期(魔の6月)を乗り切ってほしい。

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May 02, 2023

言い訳しない生き方

古い話だが、かつて、ある担任が職員室前の廊下で保護者から苦情を言われていた。

その場に居合わせ、事情をうかがっていた。

「すいません、今日は就学時健診で朝からバタバタしてしまって・・」

と担任が、子どもの様子をよく把握していなかったことをわびると父親は次のように喝を入れた。

「先生、そんなこと親には関係ないから、言っても意味ないわ。」

「今日は忙しかったから」が、子どもへの配慮ができなかったことの免罪符になるはずがない。

ついつい口にしてしまう言葉だが、何の意味もない言葉である。

保護者の言うとおりである。

だれだって忙しい。

予定外の仕事もあるし、そもそもトラブルは予定して起こるものでもない。いつだってトラブルが予定外に襲ってくる。

誰だって失敗したくて失敗するわけではない。

だから悪意がなかったのだと主張したくなる。

しかし、結果責任だ。失敗したことが事実なら言い訳しても元には戻らない。

◆愚痴らないで淡々と処理する
(愚痴る暇があったら、すぐに行動する)

◆言い訳しないで、まずは非をわびる

◆できる範囲でしかできなかった事実を受け止める
(それだけの能力であった自分を見直す)

 

TOSSの授業力検定セミナでは、「パソコントラブルにも対応するように」とメッセージが送られる。

想定外にパソコンがトラブルを起こしたとしても、検定の模擬授業にやり直しはない。

それを乗り超えるのもプロの技量だからだ。

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プリント配付の心得(2)

家庭に持ち帰る連絡プリントについては、ベテランの先生が次のようにしていると聞いたことがある。
①すぐに記名させる
②折る場合は、印刷面が見えるように折らせる。
内側に折ると見た目が白紙なので何のプリントか分からなくなるからだ。
「なくす子・落とす子・親に見せない子が必ずいる」という前提に立った時、対処法が生まれる。
 
さて、かつて、担任した中学生がプリントをもらった瞬間にしていたのが
◆提出期日を書き込んでいた。
中学校の進路関係となると、提出締め切りのあるプリントが多いからだ。
こういう子は、将来、仕事先で「できる人」として一目置かれると思った。
中学校と言えば、給食の献立表をもらった瞬間、好きな献立をマーカーで塗っている女子がいたなあ。

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プリント配付の心得

あるクラスで道徳の授業をやらせてもらった。
冒頭、お決まりの道徳プリントを配って一言。
(多分、担任は気づかなかったと思う)
「プリントが配られたら最初に何をしますか?」
子供達は「名前を書きます」と即答する。
「そうだね、名前を書くんだよね。さすがです。」とほめる。
無論、低学年なら、
「プリントを配られたら、まず名前を書きましょう。
後でやろうとすると忘れてしまいます」
という指導を入れるが、4年生だから、このゼロ段階は要らないだろう。

これを繰り返すと、子供たちは自然に書くようになる。
が、もう少し詰めることもできる。
プリントを配って数秒後、
「記名が済んだ人?」と挙手させる。
あるいは「記名が済んだ人起立」と立たせる。
そして
「すごいね、言われる前にできる子がたくさんいるね」
とほめる。
なかなかできない子には、個別に、小さな声で
「プリントが配られたら何をするんでしたか?」
「先生は何を言うと思いますか?」
と確認する。
いちいち「名前を書くんですよ」という正解を提示しないのが「肝」なのだ。

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April 23, 2023

机の上に、のりきらない!

ある学級の国語の授業。
B5サイズの学習プリントが前回分と今回分で2枚。
そして教科書とノートと筆箱。
教科書は開けばA3サイズ、ノートはB4サイズ。
これでは机の上にのりきらない。
のりきらないことも問題だが、
今どれを使って授業しているかが明確でないことも問題だった。
音読は学習プリントか、教科書か、黒板(スクリーン)に映したデジタル教科書の画面か。
教科書で音読させるなら、ノートは開かなくてもよかったし、プリントを配る必要もなかった。
教科書だけ出して、両手で持って音読させれば、集中できるのだ。
「今やるべきことに集中させる」ためには、モノの始末がとても重要になる。

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授業参観の成否はやる前に決まっている?

授業参観の準備には

①板書・教材教具などの授業準備

②掲示物などの教室環境整備

③保護者会の進行・資料準備

などがありますが、

多くの場合、参観日前までの授業の、

◆どのような授業展開をし、

◆どのように発言・発表をさせ、

◆どのように子供に対応してきたか(ノートを含む)

が反映します。

 授業参観だけ張り切って準備して普段と違う授業をしたって子供は乗ってきません。

 「今年の担任の先生はこんな人だよ」

 「こんな授業をしてくれたよ」

と子供がすでに保護者に伝えているはずです。

 これまでの学習のノートやプリントを保護者はチェックしているかもしれません。

 日頃の授業の丁寧さや楽しさも、我が子からの聞き取りとノートチェックでおよそ見当がつくものです。

 逆に、授業参観で慣れないことをやると「失敗の確率」が上がります。

I'd like to finish my work before I start it.

・・・「仕事を始める前に、それを終わらせるのが好き」という境地

「段取り八分、仕事二分」と言いますから、準備の段階で8割が決まってしまうのだと考えましょう 。

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April 17, 2023

声が出なくなったピンチこそ、チャンス!

大声で注意を繰り返すといつか先生ののどがやられます。

初任の先生が、GW前あたりで喉を痛めることがよくあります。

しかし、声が出ないことはチャンスです。

できるだけ声を出さずにすむように自分の指導の仕方を改善しましょう。

①とにかく大きな声を出さない。

この機会に静かに話す癖をつける。

②板書を活用し、指示を「見える化」する。

音声による指示を減らす。

③サインや合図を決める。(ベルを使う人もいる)

 

※たぶん今は「次は何をすればいい」と自主的に動くのを期待するのは無理でしょう。 

※「静かになるまでじっと待つ」という方法もハードルが高いです。いつまでたっても静かにならないので結局大声で注意することになります。

 

というわけで、分かりやすい作業で授業を進めることが最適です。 A3d3c239c75e43d6819dfd600dc8620a

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April 15, 2023

初耳でした。「ゴールデンサークル 理論」

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『秒で伝わる文章術』で紹介されていた理論。
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ゴールデンサークル理論は、次の3つの内容で構成された考え方です。
  • WHY:「なぜ」
  • HOW:「どうやって」
  • WHAT:「何を」
内側から外側に向かってWHY→HOW→WHATの順番で物事を説明する時の考え方。
数字や理論などの説明も大切ですが、人の心を動かすのは感情であり、直感です。
「WHY」の部分から話をすることで、直感的に共感を呼び起こし、その後の内容が好印象になります。
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「なぜ」を明確にしないとゴールが決まらない(ゴールがずれる)
「なぜ」はミッションでありビジョンであり、動機、 目的、モチベーション。
「何をするのか」ではなく「なぜするのか」を語ることが相手への共感を生む。

という主張は、「趣意説明の原則」に通じている。

「今日の授業は、○○をするよ=What」
「今日の授業は、こうやって進めていくよ=How」
ではなく
「今日の授業は、○○のためにやるよ=Why」
・・・子供が納得しないまま「What」や「How」で強引に授業を進めても、教育効果が上がらないのだと理解した。

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ジャンプの漫画学校講義録⑥ 「防御力をつければ勝率も上がる」

『秒で伝わる文章術』で紹介されているブログの内容がすごく濃い。
ジャンプの漫画学校講義録⑥ 「防御力をつければ勝率も上がる」
読者が読む気力を失わないような配慮(読者コストの発想)が必要だという主張がブログ全体から滲み出ている。
例えば、次のセリフを削る解説は、「読者への配慮」になっている。
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◆人質交換なので「ここまで」持ってくるのは当たり前なので削れます。「引き換えに」も「交換だ」にすれば文字数が減ります。人質交換が終わったら帰すのが当たり前なので、最後の一言も要りませんね。このように、必要のない文字をどれだけ削ることができるか。積み重ねれば積み重ねるほど、読みやすさに返ってきます。
・・・という解説に唸ってしまった。
まさに要約指導のリアルな現場だ。
このダイアリーもスライドを添付すると、読み手の負担が軽くなると思う。
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「相手の負担を減らす」という配慮が、自分を守ってくれる。
「防衛力は気遣い」とはそういう意味だ。

 

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