「ごんぎつね」の指導計画
◆すらすら読めるようになって、始めー終わりー中だけの検討で十分ではないか。
というある先生の感想をいただいたのが、1995年の春。
この年3月の日本言語技術教育学会報告を送った後のことだ。
市毛先生の「ごんぎつね」の指導計画は次の流れになっている。
1、このお話をすらすらと読めるようにしよう。
2、登場人物をすべてあげてみよう。
3、あらすじを5つにまとめよう。
4、ごんは初めは兵十に何をしましたか。
5、ごんは終わりに兵十に何をしましたか。
6、ごんが変わったのはどの場面ですか。
7、変わった理由はなんですか。(後略)
指導目標の③に次のように書いてある。
◆いたずらばかりしていたごんが、ひたすらつぐないを続ける、という作品の構造に気づく。
初めはどうだったか。終わりはどうなったか。なぜ、そう変化したのか。「中」で何が起きたのか。の順で検討している。
・・・鶴田清司氏のレジメにあった「学習の手引き(案)」にも、次の箇所がある。
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四 小説や物語では、一般に中心人物の心(考え)が、はじめと終わりで大きく変化している。「蜜柑」では、「私」の心はどのように変化しただろうか。エピソード(事件)の前後を対比することによって考えよう。
五、「私」の心がそのように変化したのはなぜか。その理由を話し合ってみよう。(後略)
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・・・鶴田氏の提案も「始めー終わりー中」の検討であることが分かる。
正しい引用はできないが、筑波の国語も、「始めー終わりー中」の検討が出てくる。
この順番で検討すると、「対比」「クライマックス」「人物の変化」「主題」などが含まれる。
石原千秋の『大学受験のための小説講義』(ちくま新書)にも、同様の指摘がある。
<テキストは2度読め>
①「それからどうなるか」という問いに即してストーリー(時間的経過)を読む
②「なぜか」という問いに即してプロット(因果関係)を読む
我々はふだん「このあとどうなるか」のストーリーだけにこだわって小説を読んだりドラマや映画を見たりする。
しかし、作品を読み味わうには、②の「どうしてなんだろう」という問いかけも必要であるということだ。
日常的な読書体験は、①で終わってしまうことが多いが、授業で扱うなら。初読で①、精読で②を行うという手順になるだろうか。
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