October 31, 2018

読書は脳の想像力を高める

Nou
 誤解を生じさせる興味深い事例が、次のメールの文面。

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例の案件ですが、次の日程で会議は可能ですか?

① 11日10:00~11:00
② 12日10:00~11:00
③ 14日10:00~11:00

本日中にご返事ください
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A:3回とも会議を行うものして、参加の有無を聞いている。
B:3つの日程のいずれかで会議を行うものとして、希望調査をしている。

AとBは、どちらも読める。
だから、自分の解釈が相手の意図と違うかもしれないと想像して混乱を回避しなければならない。
むろん、メールを出す側も、誤解を生じる可能性があるかどうかを吟味しないといけない。
自分のメールを客観的に見直す「メタ認知能力」が必要だと言える。

これは『脳を創る読書』酒井邦嘉(実業之日本社)の一節。
同書には、次のように書いてある。

◆想像力が身についていない人は、メールなど文字だけの情報の場合、読んでも相手の意図を察することができないので、日常的に多くの失敗を経験していることだろう。しかも、その原因が自分自身にあると自覚していないため、何度も同じ失敗を繰り返してしまう。p125


「脳はなぜ行間を読むことができるのか」の項には、次のようにある。

◆人間はいつも外界を受容しながらモデルを作り、それを外界の情報で確認しながら次の展開を予想して先読みを続けている。だから、出来事だけが書かれていて主人公の心情については書かれていない場面でも、「主人公はきっとこう思っているのに違いない」というモデルを脳の中に作り、「きっと話はこう展開していくだろう」・・などと予測しながら読んでいるわけだ。こうして文章に表現されていない部分のモデルが脳の中に作られているからこそ、行間を読むことができる。p98

・・・この主張の例示として登場するのが有名な「サリーとアン」のテストの話だ。

◆「アンがボールを箱の中に移し替えたのだが、このことをサリーは知らないはずだ」ということを想像力で補わない限り、実際にボールの入っている箱のほうを答えてしまうだろう。我々は頭の中に、それぞれの登場人物(この場合はサリーとアン)に対して別々のモデルを作り、想像力で行間を埋めながら先の展開を推理しているのだ。
 しかし、一部の子どもたちは、登場人物のモデルをうまく作ることができずに、このテストデ間違える傾向にあるという。p100

・・・「想像力」の重要性が、あちこちに書いてある。

◆文章や漫画から登場人物の心を汲み取るためには、脳の想像力で使って人に対するモデルが作られなくてはならない。
日常生活で相手の心がわかるには、目や表情やわずかな仕草などを読み取り、言葉からの断片的な情報を結びつけて真意を読み取る必要がある。だから、相手の嘘や、その中に隠された真意も見通せるわけだ。人間の想像力は実に奥深い。p102

◆小さいときにあまり本を読まずに、想像力が欠如したまま大人になってしまうのは恐ろしいことだ。文字通りの意味がとれるならまだいいが、自分の思い込みだけで読むようになったら、その間違いを決して自分では修正できなくなってしまう。だいだい自分勝手なことをそのまま書いただけでは、相手が時間をかけて読んでくれるはずがない。相手の立場から自分の文章を読んだらどう受け取るだろうか、という想像力が身について初めて、自分の真意を相手に伝えることができ、相手の心を動かすような文章が書けるようになるのだろう。p122/123

・・・「想像力が言語コミュニケーションを円滑にする」という見出しの項には次のようにある。

◆映像は情報が多い分、想像力の余地を与えない。想像力で補うべき情報は欠落したままなので、知識の応用も利かない。
そのときはわかったつもりになるのだが、想像力で補うことが必要とされないものにばかり接していると、結局、想像力が身につかないことになる。紙の本では、どうしても足らない情報を想像力で補うことによって、その人に合った、自然で個性的な技が磨かれたのだ。p125

・・・クリエイテイブの「創造力」を調べる途中で、「想像力」にぶつかってしまった。
たしかに、正しい読解には、正しい想像が必要だ。
足りない情報を「想像力で補う」という点について、もう少し深めてみたい。

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October 28, 2018

文学で培う健全な批判精神

87


光村図書の「国語教育相談室 中学校」87号に、上記タイトル脳科学者中野信子氏の論考がある。
http://www.mitsumura-tosho.co.jp/material/pdf/kyokasho/c_kokugo/kohoshi_c_kokugo_all.pdf

「ゲシュタルト知覚」を持ち出すところが中野氏である。
「ゲシュタルト知覚」とは、よくも悪くも少ない情報を脳が補ってある認知をしてしまうこと。
プラスで言えば、少ない情報から類推して効率的に情報処理できること。
マイナスで言えば、思い込みや早合点をおこすこと。

中野氏は言う。

◆この機能は、人の思い込みや錯誤を招き、誰かの嘘に惑わされるという危うさをも併せもっている。これを回避すべく私たちの脳に備わっているのが、共感、想像、良心、抑制、長期的な展望などの思考をつかさどる「前頭葉」の働きだ。
(中略)
前頭葉が発達していく時期には、その発達を促すような働きかけを行うことが肝要となる。その働きかけとはすなわち、多様な人々に共感したり、他者の心情を読み取ったり、意図を読み取ったりするなどということだ。文学とは、言語によって伝えられた人の思考の、解釈の仕方について議論を交わす領域である。つまり文学こそ、まさに、前頭葉を鍛えるために大きな役割を果たす実学なのだ。
(中略)
前頭葉が未発達な中学校時代には、文学情報から意味を構築する経験を大いに重ねることが重要だ。そして、ゲシュタルト知覚のみにとらわれず、前頭葉を働かせて、この世界には虚構というものがあること、現実には幾通りにもの解釈があることを理解してほしい。

・・・あまりにポイントが多すぎて、ほぼ全文引用してしまいたいくらいだ。ぜひ、じっくり原文を読んでいただきたい。
 印象に残ったのは、先日読んだ『脳を創る読書』酒井邦嘉(実業日本社)と重なるところがあったからだ。
ここは引用でなく、自分のまとめで示す(矢印記号が上手く出ないと思う)。

◆脳への入力の情報は、活字→音声→映像と増えていく。したがって、想像で補わねばならない情報量は、逆に、映像→音声→活字と増えていく。
活字の場合は行間を読むような想像力が必要になる。読みようによっては多様な解釈も起きてくる。p16〜20

 文学は「ゲシュタルト知覚」を用いて認知されるという中野氏の論考と重ねると、ストンと落ちた。
  映像や音声に比べて、活字は情報量が乏しく想像で補わねば全体像が把握できない。それは必ずしも短所とばかりは言えず、とりわけ文学作品を味わう上では、そこが魅力にもなっている。
 あいまいだから嫌いではなく、あいまいだからこそ面白いと思える子どもを育成できるよう、想像で情報不足を補うことの楽しさを伝えていきたい。

No

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October 27, 2018

古くて新しい「ブレーンストーミング」

 1つの結論に絞らない話し合い活動を考えた時、「ブレーンストーミング」が浮かんだ。
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ブレーンストーミングという会議の仕方は、問題解決のためにあたらしい発想、アイデイアを作りだすために考えられたものである。
この方式の会議では守るべき四つの注意がある。
第一は同席する他人の意見を批判をしないことである。「そんなアイデイアはだめだ」とかいって否定しないことである。
第二は、自由奔放に意見を述べよということである。つまり、こんなことをいえばばかげた話だと笑われはしないか、とかいうことを気にせず、おおいに自由奔放に思いついたことをいえ、ということである。別のいいかたをすれば、自分に対して批判をするな、自己規制をするなということである。
第三は量である。すなわち、できるだけ多量のアイデイアを出せということである。したがって、いろんな角度からのアイデイアをできるだけたくさん出せということでもある。
そして第四は結合である。これは他人の意見をうけて、さらにそれを発展させるということである。他人の意見から触発されて、他人と自分の意見を結合してゆくことである。

 「発想法」創造性開発のために 改版 川喜多二郎著 
 中公新書 P60/61 改行の一部に手を加えた。
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・・・1967年初版の名著である。
従来の「話し合い」には、ブレーンストーミングの4つの観点はない。
でも、向山実践の「かける」の授業や「分かったこと・気がついたこと・思ったこと」の授業には、このような大量の気づきを列挙して分類整理する方法がとられる。


 話し合いは結論を出すために収束の方向に向かうものだが、ブレストは拡散の方向に向かう。
Aという意見に触発されてBが出たり、思わぬ方向からCが出たり、無理やりDを出したりする自由度の高さがブレストの魅力である。
 結論に導く収束的な話し合いも無論大事だが、多様な解を促すブレスト的な話し合いも注目していい。
むしろ、「正解のない時代」と言われるこれからブレストが重要なのではないかと思う。そして、そのモデルとして向山実践が挙げられる。

 このブレーンストーミングについて、川喜田氏は注文をつける。
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しかしこの方法は、計画という点では大事なものが抜けていると思う。ブレーンストーミングで吐き出したいろんなアイデイアのみならず、この方法の「精神に沿って」吐き出された情報は、単に枚挙するだけでなく、組み立てられなければならない。何らかの構造あるものに組み立てなければいけない。
その組み立てにあたって、いはば統合を見いだしてゆくのに使うのが、のちに述べるKJ法である。これは構造づくりである。それはまたのちにのべる「構造計画」にも通じる。
P62/63
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・・・この「構造計画」が難しい。
 同書では別の個所で「空間的配置」という言葉で説明している。P86
 また、関連付けのための方法として、次の2つの方法を示している。P88

◆単位と単位の間を棒線でつなぐ
 ①相互関係 ←→
 ②対立   >-<
 ③原因・結果の関係 →

◆リング(輪どり)で包み込む
 リングで囲むと、関係があり同類であることがわかる。

・・・「線でつなぐ」「丸で囲む」。
 どこかで聞いたキーワードだ。
 椿原正和氏が提唱している国語B問題対策のポイントだ。
 国語B問題対策が大量の情報を構造化するために「線でつなぐ」「丸で囲む」という作業を課しているということだ。

 ちなみに、「発想法」のあとがきの参考文献には次のようにある。
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オズボーン(上野一郎訳 1958)『独創力を伸ばせ』ダイヤモンド社
ブレーンストーミング技法の原点である。問題解決のためのアイデイアを討論のなかからうちだし、以後チェック・リストでふるいをかけるゆきかたである。
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 オズボーンの9つのチェックリストもまた有名だ。

1.他に使い道は?
・改善・改良して新しい使いみちは
・そのままで新しい使いみちは

2.応用できないか?
・他にこれに似たものはないか
・過去に似たものは無いか
・何か真似できないか

3.修正したら
・新しいひねりは
・意味、色、動き、音、匂い、様式、型などを変えられないか

4.拡大したら
・より大きく
・何か加えられないか
・強く、高く、長く、厚く、頻度は、付加価値は

5.縮小したら
・より小さく
・何か減らせないか
・弱く、低く、短く、薄く、省略は、分割は

6.代用したら
・他の素材は
・他のアプローチは
・他の構成要素は

7.アレンジし直したら
・要素を取り替えたら
・他のパターンは
・原因と結果を入れ替えたら

8.逆にしたら
・後ろ向きにしたら
・上下をひっくり返したら
・主客転倒したら

9.組み合わせたら
・ブレンド、品揃え
・目的を組み合わせたら
・アイデアを組み合わせたら

https://jairo.co.jp/keyword/588

・・・「ブレーンストーミング」も「オズボーンのチェックリスト」も、めちゃくちゃ古いが、今なお新しい。

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September 30, 2018

分析的な作文は、感情の高まりが必要

向山洋一氏の学級通信「すないぱあ」No16 1977年4月18日号に、跳び箱指導の作文がある。
 わずか4.5分の出来事を詳細に作文に表している。

◆先生が「今この飛び箱をとべなかった人、ここにならびなさい」とおっしゃいました。そうすると、下をむきながら、4人出てきてならびました。先生は4人を一回ずつ飛ばせました。4人は飛び箱の上にまたがってしまいました。先生はこんど、飛ぶ人のおしりをおしました。そうすると4人の人は飛べます。こんどは、飛び箱の上にすわって、とぶ形をしてぴょんとおりる事をくり返しました。またやることになりました。私は、目をぱっちりあけ、つばをゴクンとのみこんだ。「飛べた!!」心の中でさけんだ。他の2人も次々にとべました。その3人は、前出てきた時みたいに下をむかないで、もうちゃんと顔をあげ、どうどうと歩いています。私は、先生の方に顔をむけ、やっぱり先生の言ったとおりだなあと思いました。だけど1人とべなかったので、先生はその人を飛び箱にすわらせて飛ばせるのを2回ぐらいくり返しました。先生はうなずき、私はいいんだなと思ってその人を見つめました。「トン」ふみ台の音が強くひびきました。その人は飛べたのです。それもたった4~5分で飛ばせたのです。私はびっくりして、その人と、そして先生に拍手をしました。私は、先生がわたしたちをよい人間にしようとしているんだから、わたしもがんばらなくてはと心で思いました。


・・・始業式から10数日後に跳び箱を跳ばせることは理解できるが、始業式から10数日後にこれほどの描写の作文を何人も書かせることは想像をはるかに超えている。
  
 「すないぱあ」の子どもの作文が、文科省の資料「言語活動の充実 小学校版」の以下の部分とつながった。

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◆なお,論理と情緒とを対立する問題としてとらえられることがあるが,必ずしも適当ではない。
物事を直観的にとらえるのではなく,分析的にとらえることも情緒を豊かにしていく上で有効である。
例えば,単に「わぁー,すごい」という言葉だけで感情表現するのではなく,「何が」「どのように」「すばらしい」のかについて,具体的な表現を用いて相互に伝え合うことにより,より細やかな感性・情緒を実感できるようになる。
  このようなことから,感性・情緒に関する指導を行う際,

(1)様々な事象に触れさせたり体験させるようにすること,
(2)感性・情緒に関わる言葉を理解するようにすること,
(3)事象や体験等について,より豊かな表現,より論理的で的確な表現を通して互いに交流するようにすること

が大事である。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/gengo/1300858.htm
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・・・「事象や体験等について,より豊かな表現,より論理的で的確な表現を通して互いに交流するようにすること」が、向山学級の作文に見て取れる。
 彼ら彼女らの作文は、情緒的であるが、実に分析的であり、論理的だ。

 いや、感情の高まりがあったから詳細に書く意欲が沸き起こったのだと思う。

 詳細に書きたくなるような情動を起こした出来事だったからこそ、作文が分析的になった。何とか自分の感動を相手に伝えたいと思うからだ。

 さて、これまでの自分は国語科の論理的思考にばかりこだわって追究してきた。
 しかし、思わず書きたくなる情動(感情の高まり)がなければ、詳細な文章・分析的・論理的な文章を書かせるのは難しいのだということを改めて学んだ。
 内容選定の吟味を抜きに「思考力・判断力・表現力」を高める指導をしようなどと目論むのは甘い。
 具体的な場面設定こそが必要なのだ。

  かつて、どこかに書いた。
 「せんせい、あのね」というのも、話したくてたまらないことを先生に伝えるから作文の中身が豊かになる。無理やり作文を宿題にしたって、豊かな作文を書いてくるはずがないのだ。

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June 09, 2018

「読解力向上」と「論理」の私案

★なぜ「論理」なのか~他者意識の始まりが「論理」のはじまり

文相互の関係・段落相互の関係
1)基本的な考え方=「文の構造」
2)文相互の関係を見抜くための「接続語」
3)段落構成を見抜くための「接続語」
4)筆者の主張を読み解くための「イコールのパターン」
5)芥山先生の主張を読み解くための「イコールのパターン」
6)論理力ノート 「イコール」の関係
7)イコールの関係=paraphrase
具体と抽象の関係
1)「小見出し」は具体的な文章の内容を「抽象化」している
2)「小見出し」の意味 その2
3)論理力ノート 「抽象」の訓練になる「見出し」
4)対比は「抽象化」の手だてである
5)具体的な叙述を促すために「例えば」を用いる
6)具体的な提示がないと議論はかみあわない
7)抽象と具体の整合性を確かめる「ケンカ読み」
8)抽象と具象の能力を試す「2段落構成の作文」
9)抽象と具象の能力を試す「ラベリング」

数学的なアプローチ
1)論理数学的な法則性
2)証明教育
3)証明教育の重要性
4)「東大数学」が求めるロジカルな説明力
5)数学的現代文読解法
6)
数学的推論

三角ロジックの考え方
1)基本構造
2)仮説化のロジック
3)「理由」と「主張」と「大前提」
4)「理由」と「根拠」を分けて考える
5)「理由」と「主張」の往復活動
6)「言葉」と「定義」の往復活動

その他の論理関係
1)「だが、しかし~」の論法
2)論理力ノート 「譲歩」
3)論理力ノート 「弁証法」
4)因果関係=「なぜ」でつながる文脈~フィンランドメソッド~
5)因果関係=「なぜ」で読み解く『ドラゴン桜』の学習法
6)説得力を増すための「比喩」
7)対照実験の論理をつかむ「対比」の思考
8)文中の数値を具体的にイメージする

★トラックバックいただいた方々の論理
 論理エンジンに近い「文単位」の指導
 論理的な思考
 論理的な思考(2)

★自分のレポート
「要約指導」に関わる授業実践レポート
「要約指導」に関わらない授業実践レポート
 

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May 12, 2018

「語彙力が高い人の特徴は読書の幅広さ」

「語彙力が高い人の特徴は読書の幅広さ」という記事を見つけた。

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 語彙力向上のかなめは「ノンフィクション」を含む読書の幅広さ

 読むことがある文章や本の種類と語彙力の関係を見てみると、新書や実用書などのノンフィクションや新聞を読む人の語彙力が高いということがわかりました。
ただ、ノンフィクションや新聞だけを読んでいれば語彙力は向上するのかというと、そうではないようです。
読む本や文章の種類によってグルーピングした結果では、「新聞、ノンフィクションを含む複数分野」を読む人の語彙力が最も高く、
幅広いジャンルの読書をする人のほうが、語彙がより高い傾向にあることがわかります。

http://benesse.jp/kyouiku/201708/20170802-2.html
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 ふだんの会話では絶対使わないような言葉が、書物という異次元の世界では出てくる。
 日常会話ではとうてい使わない抽象語句に慣れ親しむには、ノンフィクションや論説文がよい。
  感情表現を豊富にしたいなら小説がよい。
 漫画が読書としての価値が低いのは、会話文が多く、使用語彙が平易すぎることだ。それに「描写」については文字表現がない(それは長所でもあるが)。

 たとえば「平和・安らぎ」に関する以下の四字熟語。全部初耳であった。

(1)「安心立命(あんじんりゅうみょう」
「あんしんりつめい」とも読む。安心は仏教用語,立命は儒教の用語。すべてを絶対のものにまかせて、心が動揺しないこと。

(2)「地平天成(ちへいてんせい)」
 世の中が平穏に治まり、全てのものが栄えていること。「平成」の原典の一つ。

(3)「内平外成(ないへいがいせい)」
 国の内側がよく治まっており、外交も特に問題がなく、とても平和な状態のこと。
「地平天成」と同じく元号「平成」の由来とされる語。
「内平かに外成る」とも読む。

(4)「十風五雨(じゅうふうごう・じっぷうごう)」
 十日ごとに風が吹き、五日ごとに雨が降る、農耕に適した天候のこと。
 世の中が平和で穏やかな状態であることのたとえ。

(5)「意気自如(いきじじょ)」
 心の持ち方がいつも通りで平静な様子。
「意気」は気力や気概、「自如」は動じない様子。

(6) 「万里同風(ばんりどうふう)」
 天下がよく統一されていてはるか遠くの地まで風俗が同じであること。

・・・なるほど、「平穏無事」「安寧秩序」「恒久平和」」ぐらいの語句で満足してはいけないわけだ。

   「語彙」は知性や品格の表れだとつくづく思う。

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August 04, 2017

国語の「抜き出し問題」

 市の夏期研修で、中学校の教科書教材である『盆土産』の模擬授業が行われた。
 少年がどんな気持ちで「えびフライ」とつぶやいているのか読みとる課題で、文章中から心境が分かる箇所を抜き出す作業が行われた。
 
 読解力が「抜き出す力」だけなら、鍛えるのは容易だし、正解に迷うことも少ない。「国語の答えは文中にあるから安心せよ」と言い切れる。

 ただ、実際は「文中にある言葉」だけでは、問いに対応できない。今回の模擬授業で言うと「少年のつぶやきは、期待と不安の2つの気持ちが入り混じっている」とまとめる場合だ。

 大人なら「期待」と「不安」というキーワードが自然に出てくるが、どちらも文中にないワードだ。どうして「期待」「不安」というワードが出てきたのかと聞かれても答えづらい。

 文章中に出てこない「期待と不安」を、当然の正解として提示してしまうと、
「これだから、国語は分からない」
「文章中に答えはあるって言うけど、おかしいじゃん」
ということになる。国語嫌いの要因の1つは「なぜそのワードが出てくるのか分からない」ところにある。受験国語のテクニックの1つに、よく出る抽象語(主題語)を覚え込んでしまうことがある。

 主人公の心境に合うワードを選択肢から選べという設問なら「期待」「不安」に近い概念を選べばいい。
 適切な二文字熟語を2つ書けと言われたら、「二文字熟語」というヒントに合わせて捻出すればいい。
 数学の図形問題でパッと補助線が浮かんでくるのが鍛錬の成果であるように、国語の読解問題で、文中にない適切なワードがパッと浮かんでくるのが鍛錬の成果だ(あえて才能とは言わない)。

 さて、井関義久氏や鶴田清司氏は、読解力を、「解読」と「解釈」に分けた(と記憶している)。

◆客観的に答えが確定できる読みが「解読」
◆主観的な見解を伴う読みが「解釈」


 この定義に沿って考えると、

◆つぶやく際の心境を文中の言葉から抜き出すのが「解読」
◆文中にない「期待と不安」という言葉で括るのが「解釈」

にあたる。

 解釈問題は主観性が強いので、選択肢で出題される場合が多い。
 選択肢なら何とかなるから国語嫌いの子も納得させられるだろう。選択肢を吟味する中で、端的なキーワードの感覚が磨かれると言ってもよい。

 まずは、抜き出し問題に徹底して慣れること。解釈問題を捨てても、解読問題と選択問題だけで、かなりの点数がとれる。
 ただし、そもそも授業者が子どもに「解読」を求めているか、「解釈」を求めているか、その自覚はもって欲しい。

※ちなみに「盆土産」の今回の模擬授業場面は、TOSSランドにも実践があった。

http://www.tos-land.net/teaching_plan/contents/28197
・・・村上氏も模範解答例の中で「これは、土産の中身が正体不明なため、期待と不安の入り交じった気持ちであることを表している」と書いている。

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March 18, 2017

クリティカルシンキングの工夫

 「考える力(クリティカルシンキング)」を鍛えるために日常生活でできる工夫を、これまでの研究を基に、紹介します。(*3)

・・・たまたま見ていたサイトで、クリテイカルシンキングについての記載があった。
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◆仮説を立て、試すことを励ます
例えば、「この食材、このスーパーの袋に全部入るかな?」「この氷とあの氷、どちらが早く解けるかな?」と質問し、子どもに「入らないと思う」「この氷の方が早く解ける」など「仮説」を立てさせ、実際にどうなるかを試す機会を与えてやりましょう。

◆周りの物事の「類似点」と「差異」を見出す
身の回りの物事を2つ以上選び、「類似点」と「差異」について話し合ってみましょう。例えば、「月と雲は同じ空にあるけれど、色も形も違うね」、「スプーンとフォークは両方とも食事を口に運ぶ道具だけれど、先の形が違うよね」など。

◆分類する
玩具でもいいですし、地面に転がっている石を集めるのもいいでしょう。色、形、大きさ、感触別など、様々な分類法を試してみましょう。

◆「事実」と「解釈」の違いを話し合う
例えば、「今日の給食は煮魚だったよ。美味しかった」と報告する子と、「じゃあ今の言葉の何が『事実』で、何が『意見』かな?」と話し合ってみましょう。またニュース番組を見ながら、「今アナウンサーが言ったことは事実かな、それともアナウンサーが思ったことかな?」と尋ねてみます。

◆「他にどんな方法があるだろう?」と考える
積み木を積み上げたなら、「他にも高くする方法があるかな?」と試してみましょう。洗濯物を一緒にたたみながら、「他にたたみ方があるかな?」と考えてみるのもいいです。

◆すぐに答えを示さない
自ら考え、試し、失敗する過程でこそ、「考える力(クリティカルシンキング)」はグンと鍛えられます。積み木を高く組み立てようとする子に向かって、「大きいものを下にした方が積み立てる時安定するわよ」などとすぐに「答え」を言ってしまわず、子ども自らが考え、試す過程を体験させましょう。

◆ディベート遊び
親子間や、兄弟姉妹間などで「ディベート遊び」をしてみましょう。意見が分かれた場合など、絶好の機会です。「お兄ちゃんはハンバーグが食べたいというけれど、あなたは唐揚げがいいのね。じゃあ、なぜそう思うのかを、お互い理由を並べて説明してくれるかな」などと始めます。

◆「遊ぶ時間」を大切にする
子どもの「遊び」には、「考える力(クリティカルシンキング)」を培う機会が溢れています。例えば、お友達と砂山を作るために、「少し水をしみこませた方が崩れにくいと思う」と「仮説」を立て、試すこともあるでしょう。手持ちの道具や玩具の「類似点」や「差異」を見出し、より適切なものを選び、お友達と「どうして砂山の右側からトンネルを掘る方が、左側から掘るよりいいのか」を話し合うこともあるでしょう。遊びは「考える力」を育むチャンスの宝庫です。「夢中で遊ぶ時間」を、なるべくたっぷりとることを心がけてやりましょう。

日常生活に「考える力(クリティカルシンキング)」を培う工夫を取り入れ、子どもたちが、これからの世界を生き生きと駆け抜ける土台を築いてやりたいですね。
https://allabout.co.jp/gm/gc/467251/2/

=============(引用ここまで)

 すごく分かりやすい。
 すごく取り組みやすい。
 
 ママさんたちが、このようなサイトを見ているのだとしたら、下手な教師の授業は糾弾されかねない。
 教師はママさんの知識の上をいかないといけないのだが、この記事の参考資料は、どうやら日本のものではない。

(*3)Abrami PC, Bernard RM, Borokhovski E, Wadem A, Surkes M A, Tamim R, Zhang D. 2008. Instructional interventions affecting critical thinking skills and dispositions: a stage 1 meta-analysis. Rev. Educ. Res. 78:1102–1134.

 すごいな~。著者の長岡真意子氏のプロフィールを見ると「国内外の豊富なリサーチ資料に基づく子育てヒントの提供」とある。
 こうなると、ママさんが見る無料サイトだからといっても、おいそれと太刀打ちできないことがわかる。

 ただ、クリテイカルに列挙するなら、羅列ではなく、ナンバリングしたい。それに順番も、もう少し工夫したい。
 並び替えてみると、今まで自分たちが目指してきたものと、ちゃんと重なってくる。

(1)「遊ぶ時間」を大切にして、情報を蓄積する。

(2)列挙する・分類する。

(3)「類似点」と「差異」を見出す。

(4)「事実」と「解釈」の違いを話し合う。

(5)仮説を立て、検証する。

(6)他の方法も考える。

(7)ディベート遊び(理由を言い合う)

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March 05, 2017

長い一文を読み取る力

  5年生のクラスに補欠で入り、国語テストを監督することになった。
 学年のまとめ(ぶんけい)は、なかなか手ごわい読み取りテストだった。
 「ゆるやかにつながるインターネット」は昨年の教科書教材なので、子ども達にとっては初見の説明文である。
 文章全体に様々な「2つ」が組み込まれていて、その「2つ」を探すことが主に出題されている。
 便宜上、設問の1~4として以下に関連する一文を示す。さらに便宜上「」と①②を書き加えておく。

設問1の該当箇所
インターネットにつながるあやしさ・・「①その一つは~。②もう一つは~。」

設問2の該当文
「①いつも意図した通りにやりとりが運ぶと思わず、わからなかったら確かめる、②予期しない返事が来ても、おこったりあきらめたりせずに、きちんと説明する」ということを重ねていきたい。

設問3の該当文
「①よく考えずにほかの人を考える内容を発信したり、②個人的な情報を無断で公開したりしては」、人をつなぐはずのインターネットが人を傷つける道具になってしまう。

設問4の該当文
「①受け取った情報が信用できるものかを注意深く見きわめることはもちろん、②あなた自身が無責任な言動をしていないかどうか、常に自分に問う必要がある。

・・・設問1は、「その一つは~。もう一つは~。」だから決して難しくない。ただし、場所がずいぶん離れているので、そこが難しい。
 「その一つ」には改行がないの見落としやすいが、「もう一つ」には改行があるので、「もう一つ」が出てきたときに、前の「一つ」がどこにあるかを逆思考で確認するようなスキルが求められる。

 設問2・設問3は、長い一文の中に、2つの注意事項が書かれている文型。
 特に設問3の場合は「~たり、~たり」なので、2つの内容が盛り込まれていることを意識させやすい。
 大人でも間違いやすい「~たり、~たり」の作文に書き慣れておくと、読み取りの際にも2つの内容が意識ができるのではないだろうか。

 設問4は、「Aはもちろん、B~」という構造で2つの内容が盛り込まれている文型。
 なるほど、確かにこういう表現は日常でよく使われる。読み慣れること・書き慣れること・言い慣れることが大切なのだと思う。

 それにしても、今回、じっくり読んでいて「一文の長さ」が、難度を上げていることがよく分かった。

設問2の一文は、
◆たがいに、いつも意図した通りにやりとりが運ぶと思わず、わからなかったら確かめる、予期しない返事が来ても、おこったりあきらめたりせずに、きちんと説明するということをていねいに重ねていきたいものです。

設問3の一文は
◆よく考えずにほかの人を考える内容を発信したり、個人的な情報を無断で公開したりしては、人をつなぐはずのインターネットが人を傷つける道具になってしまいます。

設問4の一文は
◆受け取った情報が信用できるものかを注意深く見きわめることはもちろん、あなた自身が無責任な言動をしていないかどうか、常に自分に問う必要があります。

 この程度の一文の長さに耐えられるような日ごろからの読書体験が必要だ。

 さて、今回のテストで、かなり出来が悪かったのが、設問1に関する部分。
 2か所の内容を15文字以内で書かせるのだが、後半の一文は

◆もう一つは、顔を合わせないですむという気楽さ、いつでもつながりを切ることができるという安易さから、つい無責任になりがちだということです。

 この一文の構造が理解できる人は、要約したら

◆「もう一つは、つい無責任になりがちだということ」

になることが分かる。15字の模範解答は「無責任になりがちだということ」。
 しかし、子どもたちは一文の前半に目がいってしまい、ほとんどの子が「顔を合わせないですむ気楽さ」と書いていた。そこそこ15文字でうまく抜き出せるからだ。

 長い一文を読み取る力として、

(1)一文に含まれた複数の意味を分ける力
  =複文を短文に書き直すトレーニングで身につける。
  =意味ごとに囲む・番号を打つ(ナンバリング)

(2)主述や挿入部など、内容の軽重を理解する力
  =主述をつかむトレーニングで身につける。
  =要約のトレーニングで身につける。
  =余分な箇所を消すトレーニングで身につける。

などが考えられる。
 たぶん、もっと細分化できると思う。しっかり検討したい。

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朝読書をどう指導するか

 黒柳徹子の「小さいときから考えてきたこと」(新潮文庫)を読んだ。
 最近の自分の読書は教育書・ビジネス書が多かったので、久しぶりに軽めの読書だったが、自分の知らない世界に触れるという意味では有意義だった。

 過日、中学校の国語の先生たちと会う機会があり、朝読書の話題になった。
 そんな経緯もあり、このようなエッセイをたくさん読ませることを勧めたいと思った。
 それは朝読書という短時間でそこそこキリがつかないようでは、授業中に続きが読みたくなって困るからでもある。
 星新一のショートショートは今の中学生にも人気があるとのことだったが、まずはエッセイや短編で読書の基礎体力を付けさせたい。
 最近は重松清も恩田陸も読んでいないけど、「これではいかん」という気になった。児童生徒に読ませたい作品をしっかり把握できるように読書の方向を調整したい。

 黒柳徹子の「小さいときから~」は、ユニセフ親善大使として訪れた紛争地域での子どもたちの様子と自身の戦争中の体験とが重なる部分がある。
 中学生にも読ませたいと思う章が多かった。
 特に「黄色い花束」は、中学校定番の「字のないはがき」や「大人になれなかった弟たちに」よりも、生徒の心に響くかなとも思った。太平洋戦争だけではあまりに遠い過去だが、現在の紛争地域の話題があるので、戦争や紛争にリアリティがあるのだ。
 少しだけ引用する。

◆私が子どものとき、何も知らないで、日の丸の旗を振って送り出した兵隊さんは帰ってこなかった。自由が丘の駅に行って、出征する兵隊さんに旗をふると、スルメの足を焼いたのを一本もらえた。私は、それが欲しくて、時間があると、行っては旗を振った。スルメなんて、あの頃、めったに食べられるものではなかった。知らなかったとはいえ、私は、あのとき、スルメが欲しくて送り出した兵隊さん達が帰って来なかったことを、今も申しわけなく、私の心の傷になっている。あどけなく手を振っている子ども達(竹田注 コソボの子ども達)を裏切っては、いけないのだと、私は子ども達が手を振るのを見るたびに思う。あの女の子から貰った黄色い花は、ノートに挟んで押し花にした、コソボの記念に。

・・・心の傷は、小さいときに生ずるものもあるが、大人になってから「知らなかったとはいえ、申し訳ないことをした」と生ずるものもある。
 大人の入り口にあたる中学生にも、そんな「心の傷」の存在に共感してもらいたい。
「知らなくてもよかったことまで、知ってしまうのが大人なのだ」と言えば、ちょっと格好良すぎるかな。

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